ドローンの飛行に関する規制で最低限押させておきたいポイント

一昔前までは、ほとんどドローンの飛行に関する規制はありませんでした。それが、2015年に起きた首相官邸無人機落下事件を契機にドローンに関する法規制の議論が活発となり、規制が進んでおります。現在は、昔と違い、ほとんど自由にドローンを飛ばすことができなくなっています。

ただ、個人・法人問わず、新たにドローンを購入した方が飛行させるにあたって、こうした法規制についての知識が欠けている方は非常に多くいらっしゃり、知らないうちに違反を犯している方も少なくありません。

ドローンに関係する代表的な法律としては、航空法・小型無人機等飛行禁止法・電波法などがあります。ドローンに関係する部分については頻繁に改正が行われる上に、あまり周知がされていないので、そもそも規制があること自体知らないという方もいらっしゃいます。

このページでは、上記3つの法律を中心に、最低限知っておきたい代表的な規制を見ていきたいと思います。

航空法による規制を受ける

ドローンの規制で最も影響が大きいのが航空法(国土交通省所管)でしょう。航空法上の無人航空機(ドローン)に該当する機体なのかどうかで、規制が大きく変わってきます。

航空法では、機体重量100g以上の「無人航空機(ドローン)」が対象となっております。屋外で飛行させるにあたり、機体登録が必須な他、飛行内容・場所に合わせた適切な飛行許可申請が必要な場合が出てきます。
※令和4年6月までは200g以上の機体が対象でしたが、改正されました。

見方を変えると、100g未満の重量のものであれば、一部を除き航空法の規制は受けません。そのため、遊びで少し飛ばしたいといった理由であれば、100g未満のものを選ぶことで飛ばしやすくなります。

注意点として、一部の空港等において100g未満でも飛行させられないあるいは空港事務所等の許可が必要な場合などがあります。

また、航空法が適用されない100g未満の機体だからといって他の規制もなくなるわけではありませんので、好き勝手自由に飛ばせるわけではありません。航空法のすべてが適用されないわけではない他、後で説明する「小型無人機等飛行禁止法」や条例など、別の法律等においては規制の対象となります。

そのため、ドローンの飛行にあたっては、航空法だけを見るのでなく、さまざまなところで判断をしていく必要があります。

ただ、まずは航空法上問題がないかどうかを確認することが重要であり、ドローンが100g以上あるのかどうか、そこを確認することから見ていくと効率よくチェックすることができます。

航空法における特定飛行に該当する場合は飛行許可申請が必要

仮に機体重量が100g以上であり、機体登録を行ったものと仮定して話を進めていきます。

航空法では、ドローンを「飛ばす場所」と「飛ばし方」において、制限を設けています。

飛ばす場所における規制

「飛ばす場所」に関しては、以下の通り飛行禁止空域が定められています。

  • (A)空港等の周辺の空域
  • (B)緊急用務空域
  • (C)地表又は水面から150m以上の高さの空域
  • (D)人口集中地区(DID地区)の上空
無人航空機の飛行の許可が必要となる空域:国土交通省より引用

他の航空機や地上にいる人あるいは物との安全を確保する観点から無人航空機(ドローン)の飛行を禁止する空域が定められています。

航空法ではこれらの飛行禁止空域を大きく2つに分けて定義しており、1つ目がA~Cの「航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域」としており、2つ目がDの「人又は家屋の密集している地域の上空」となっています。

これらに該当する箇所で飛行させることは特定飛行にあたり、適切な許可申請が必要となります。

皆さまが実際に飛行をさせたいと考えた際に、その場所が空港周辺等の空域に該当するのかどうか、人口集中地区に該当するのかどうか自分で判断するのが難しい場合があるかもしれませんが、基本的に国土地理院の地図でチェックをすること自体は可能です。ただ、空港周辺での飛行にあたって、高さ制限の確認など、空港事務所とのやりとりが発生するケースもあるため、判断が難しいことがあります。

空港周辺やDID、高さ150mでの飛行に関しては以下のページもご覧ください。

なお、緊急用務空域は、一般の方は申請しても許可は出ません。

飛ばし方における規制

航空法では無人航空機の飛行方法についての定めがあります。
※航空法の正確な条文を記載すると長くなり、わかり難くなるため、ここではあえて簡易的な表記をしております。

飛行方法についての定め>

  1. アルコールの影響がある状況下での飛行の禁止
  2. 飛行前に適切な整備点検、安全確認などの飛行に必要な準備を行う
  3. 航空機又は他の無人航空機との衝突の予防のため、状況に応じ地上に降下させること
  4. 他人に迷惑を及ぼす方法(不必要な騒音や急降下等)での飛行禁止
  5. 日の出から日没までに飛行させること(夜間飛行不可)
  6. 目視の範囲内で飛行させること(目視外飛行不可)
  7. 人又は物との距離を国土交通省令で定める距離(30m以上)を保って飛行させること
  8. 多数の人が集まるイベント等の催しの上空は飛行禁止
  9. 危険物(爆発性等)の積載禁止
  10. 無人航空機からの物件等の投下禁止

上記の飛行方法に関して、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがない場合に限り、上記⑤~⑩に該当する飛行は特定飛行に該当し、国土交通大臣の承認を受けることで飛行させることが可能です。一方で、①~④については除外規定はなく、絶対に遵守しなければならない事項となります。

上記の①から⑩について少し詳しく見ておく必要があるため、それぞれ簡単に解説させていただきます。

①アルコールの影響がある中でのドローン飛行禁止

①の「アルコールの影響」についてですが、当たり前のことではあるのですが注意が必要な事項となっています。

アルコールは飲料からの摂取だけでなく、食べ物に含まれるアルコールの影響も含まれ、呼気・血中濃度に関わらず、少しでもアルコールが検出されないようにしてください。そのため、ドローンを飛ばす前日や当日は飲食にも気を配る必要があります。道路交通法の酒気帯び運転等とも基準が異なりますのでご注意ください。

青森ねぶた祭で、アルコールを飲んでドローンを夜間に飛ばし書類送検された事例もあります(読売新聞参考)。

絶対に禁止ですのでご注意ください。二日酔い等で飛行させることもできませんのでくれぐれもご注意ください。飛行許可・承認申請をとっているかいないかは関係なく飛行不可です。

②飛行前の適切な整備点検、飛行環境の安全確認をし、飛行に必要な準備を行う

飛行前確認といっても具体的に何をすればいいのでしょうか?

通達によると以下のような例があげられています。

行う事具体的な内容・定義
当該無人航空機の状況について外部点検及び作動点検を行う事バッテリー、プロペラ、カメラなどの各機器が確実に取り付けられていることの確認、プロペラ、フレームなどの機体に損傷や故障がないことの確認、通信系統・推進系統・電源系統及び自動制御系統が正常に作動することの確認
当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認、飛行経路下に第三者がいないことの確認
気象情報を確認すること風速、気温、降雨量が運用限界の範囲内であることの確認、十分視程が確保されていることの確認
燃料の搭載量又はバッテリーの残量を確認すること十分な燃料又はバッテリーを有していることの確認
無人航空機の飛行の安全に関する教則のP24を参照し引用しています。
③他の航空機等との衝突の予防

簡単に記載すると、他の飛行機やヘリコプター、無人航空機(ドローン)と衝突しないように予防してください、ということになります。

具体的な予防方法としては航空法施行規則に定められていますが、要約すると以下のようになります。

  • 他の航空機(飛行機やヘリコプターなど)を発見した際はあなたのドローンを着陸させる
  • 他のドローンを発見した場合、まずは安全な間隔を確保して飛行させ、それができず衝突するおそれがある際は着陸させる
④他人に迷惑を及ぼす方法による飛行禁止

これは文字通り迷惑をかけないようにしましょうということとなります。

人に向かって無人航空機を飛ばすといった行為はまさに迷惑行為です。
また、不必要な急降下や騒音を発するような行為は、迷惑なうえに危険を伴います。

この航空法の規定は「危険な飛行により航空機の航行の安全や地上の人や物件の安全が損なわれることを防止する」ことが趣旨であるとされています。
※参照:無人航空機に係わる規制の運用における解釈についてより

こうした行為は禁止であり、やらないようにしてください。

ここまでで記載した①~④は、飛行許可申請とは関係なく絶対に順守しなければならないものとなります。

次の⑤~⑩は承認を得ることで飛行が可能です。

⑤日の出から日没までに飛行させること(夜間飛行不可)

ドローンは昼間(日中)のみの飛行に限定されており、夜間に飛行させたい場合は承認が必要となります。

ここでいう昼間とは何時から何時までを指すのでしょうか?具体的な時間は法律には記載されておらず、「日の出から日没まで」でと定義されています。そして、日の出から日没までの時間は「国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入り時刻をいうものである」とされています。

この国立天文台が発表する時刻は各地域によって異なります。また、当然季節により時間が変わってきますので注意が必要です。

⑥目視できる範囲で飛行させる

飛行させる無人航空機(ドローン)の位置や姿勢を自分の目で把握するとともに、その周辺に人や物がないかなど常時監視が行える状況を確保する必要があります。

実際にドローンを飛行させる本人自身の目で見ることを求めており、補助者などの別の人間がドローンを監視しているとしても、本人が見ていないのであればそれは目視できる範囲での飛行に該当しません。また、双眼鏡やカメラ、各種モニターなどを用いてドローンを見る方法は目視に該当しないとされています。「常時監視」という記載が航空法にありますので、例えば基本的に自分の目でドローンを確認しながら飛行させるけど、ちょっと見づらいところではモニターを使って位置を確認しながら飛行させるといった飛ばし方は目視による飛行に該当せず、目視外飛行となってしまいます。バッテリー残量の確認のため、一瞬目を離すような場合だけであれば問題ないとされていますが、基本的に目を離す可能性が少しでもあるならば、目視外飛行に該当してしまうおそれがあることを考えると、承認申請しておいた方が良いでしょう。

目視による飛行ができない場合は国土交通大臣の承認が必要です。

目視外飛行の一例>

  • モニターを見ながらやFPVゴーグルをしてドローンを飛行させる
  • 双眼鏡で見ながらドローンを飛行させる(眼鏡・コンタクトはOK)
  • 操縦者がドローンから目を離す必要があるため補助者が代わりに監視して飛行させる

この他にも様々な注意点、あるいは誤解しやすい点がいくつかあり、人口集中地区における目視外飛行に関しては法改正などもありますので詳しくはご相談ください。

大半のケースで目視外飛行が必要となりますので、承認申請の必要性は高いと言えるでしょう。

目視外飛行については以下のページもご参考ください。

アロー行政書士事務所の包括申請プランでは、この目視外飛行の申請が基本料金に含まれております。

⑦人又は物との距離を国土交通省令で定める距離(30m以上)を保って飛行させること

ドローンを飛行させる際は人や物件から30m以上の距離を保つ必要があり、この距離が保てない場合は国土交通大臣の承認申請が必要となります。

まず、人や物件とは何を指すのかということを知る必要があります。

人とはドローン操縦者本人や補助者などの関係者以外の人を指します。なので、操縦者本人や補助者が30m以内に近づいてドローンを飛行させるにあたっては承認の必要はありません。どこまでがこの「関係者」に該当するのかは判断が必要となってきますので注意が必要です。

次に物件とは、ドローン操縦者や補助者などの関係者が所有・管理する物件以外の物を指します。
この物件に該当する物の具体例をあげると、例えば、電柱や送電線、街灯などは「物件」に該当します。一方で、自然物(樹木等)は物件に該当しません。

距離を保つことが難しいケースが多いので、基本的に承認申請を行う必要があると言えます。

■参考記事

⑧多数の人が集まるイベント等の催しの上空は飛行禁止

これは、特定の日時・場所で行われる多数の者が集まる催しのことを指し、自然と人が集まっている現象は含みません。

こうした集まりが行われている場所の上空でドローンを飛行させる場合は国土交通大臣の許可承認が必要となります。

⑨危険物(爆発性等)の積載禁止

危険物とは、爆発のおそれのある火薬や引火しやすい液体物など爆発性・易燃性を有する物、他の物件を損壊するおそれのあるものを指します。農薬散布などはこの危険物の承認申請が必要です。

除外規定として、ドローンの飛行そのものに必要不可欠で機体と一体となって輸送される物は危険物に該当しないとされています。

こうした危険物を積載する場合は国土交通大臣の承認が必要です。

⑩無人航空機からの物件等の投下

飛行しているドローンから物件を投下するには国土交通大臣の承認が必要です。

物件の投下というと配送物などを思い浮かべる方が多いかと思いますが、そうしたわかりやすい物だけでなく、例えばドローンを活用して空中から農薬を散布したり、種をまいたりする行為も物件投下に当てはまります。

こうした物件投下を行う場合は承認申請を行いましょう。

機体登録は必須

補足で追加の記載になりますが、機体登録すらしていないという方も一定数いらっしゃいます。

屋外で飛行させるにあたり、特定飛行に該当せず、許可不要な場合であったとしても、機体登録は必須です。

違反しないようご注意ください。

小型無人機等飛行禁止法による規制にも注意

航空法では100g未満のドローンは規制の対象ではありませんでしたが、この小型無人機等飛行禁止法においては100g未満のドローンも飛行禁止対象となります。

また、所管も「警察庁」となりますので、規制の概要等は警察庁のHP等を見ていくこととなります(航空法では国土交通省のHP等を見ていました)。

この小型無人機等飛行禁止法では、内閣総理大臣官邸等の国の重要な施設等における上空からの危険を未然に防止し、安全を確保することを目的としています。

条文を参照すると、

何人も、対象施設周辺地域の上空において、小型無人機等の飛行を行ってはならない
飛行禁止法10条参照

と記載されていますが、この対象施設周辺地域とは、先ほど記載した国の重要な施設等(法律や官報に示される施設)のことを指し、それら施設の周囲です。東京オリンピックの会場のように期間限定で指定されるケースもあります。この辺りの細かい情報・条件は割愛しますが、詳しく知りたい場合は警察庁HPなどをご覧ください。

この規定によりドローンを対象施設上空で飛行させることができません。もし違反した場合は罰則があります。

ただ、原則禁止であり、除外規定もあります。

小型無人機等飛行禁止法の禁止除外規定について

どのようなケースで飛行禁止が除外されるのか見てみましょう。
※以下は飛行禁止法第10条第2項の条文を要約したものとなります。

  • 対象施設の管理者又はその同意を得た者がドローンを飛行させる場合
  • 土地の所有者・占有者又はその同意を得た者が、その土地の上空に限って飛行させる場合
  • 国又は地方公共団体の業務を実施するために飛行させる場合(国又は地方公共団体から委託を受けた者が飛行させる場合)

上記の何れかに該当する場合、管轄の都道府県公安委員会等に「通報」を行うことにより飛行させることが可能となります(飛行禁止法第10条第3項より)。

航空法における国土交通大臣の許可・承認を得ていても、対象施設周辺でドローンを飛ばす際は小型無人機等飛行禁止法における手続きが必要となりますのでご注意ください。

電波法の規制や条例など、その他の法律等の影響を受ける

この他にも様々な法律がありますが、ドローンの操縦においては電波が不可欠ですので、「電波法」の順守も重要です。

電波の出力によっては操作に免許が必要となるケースがあるなど、注意が必要となることがあります。
※電波は総務省所管となりますので詳しくは総務省HPをご覧ください。

ここでは電波法についての解説の詳細は省きますが、このように様々な法律でドローン飛行が規制されているので、ドローンを飛ばすにあたっては注意が必要となります。FPVドローンなどでは注意が必要でしょう。

また、条例で個別にドローンに関する飛行に制限を設けているケースがあります。

その他、道路における通行・交通の妨げになるなど、道路法(例えば道路使用許可等)や入林届など、さまざまなルールを守り、ドローンを飛行させる必要があります。

ドローンの飛行を禁止・制限する法的な根拠がなかったとしても、関係する機関へ話を通しておいた方が良い場合もあります。

このような規制がある理由としては、安全、というものが一つ大きなものとしてあります。

大きな事故につながる可能性がありますので、そうした観点をもって飛行させるようにしましょう。

規制が心配なら行政書士に相談する

ドローンの飛行にあたって、さまざまな規制があることから、行政書士に申請を依頼する方も少なくありません。

近年はコンプライアンス意識の高まりから、ドローンの仕事を発注する側が適切な許可が本当に取れているかを気にするケースが非常に増えています。

コンプライアンス意識が低い業者には仕事を発注しない傾向にあるため、もし心配であれば、行政書士に代行依頼をしてみるのも良いでしょう。

当事務所でも、ドローン飛行許可の申請代行やサポートを行っておりますので、気軽にお問合せいただければと思います。

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執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や建設業許可申請、産業廃棄物収集運搬業等の許可申請や契約書作成業務を行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。ドローンはDJI Mini 3を保有し、撮影しています。
ご依頼・ご相談などはお問い合わせよりご連絡ください。
所属:日本行政書士会連合会、東京都行政書士会
行政書士登録番号:24080257