あらゆる産業でドローンの活用が検討されています。
建設工事現場や測量、点検、空撮など、さまざまなシーンでの利用が見込まれ、導入が進んでいます。
ただ、中には、ドローンを購入したものの、どうすればいいのかわからないという方もいらっしゃいます。思った以上に手続きが多くて戸惑ってしまう方は少なくありません。
特に個人事業主で外壁や屋根の点検などの仕事で試験的にドローン導入してみようとしたものの、どうすればいいのかわからず、違反して飛行させてしまうケースが見受けられます。
そのため、このページでは、ドローンを飛ばすにあたって理解しておくべき最低限のルール・規制について解説していきます。
なお、現実問題として、ドローンの活用シーンは多岐にわたります。それぞれの利用方法あるいは飛行場所により必要な手続きは異なるという前提があることはご承知おきください。個別具体的な相談は別途ご依頼いただけましたら幸いです。
はじめに:ドローンを飛ばすのに資格や免許はいらない
ドローンを飛ばすのに資格や免許が必要だと思っている人は意外と多いのですが、なくても飛ばせます。
国家資格制度ができましたが、国家資格がなくてもドローンを飛行させること自体は基本的に可能です。民間資格も当然不要です。許可承認が必要な飛行においても、一部の飛ばし方(レベル3.5飛行やレベル4飛行等)を除き、適切な手続きさえできていれば、飛行は可能です。
なお、資格は不要ですが、資格があることで一定の技能を証明できるので、お仕事を受注するにあたっては有利に働く可能性はあります。
特定飛行をするならば一定の飛行経歴は必要
資格はなくても飛ばせますが、屋外で飛行させるにあたって、特定飛行と呼ばれる、許可・承認が必要な飛行を行うのであれば、ある程度の訓練を行い、必要な技能を習得していることが求められます。
具体的には、総飛行時間が10時間以上必要です(例外はあります)。
また、目視外飛行、夜間飛行を行うのであれば、承認申請が必要となりますが、これらの飛行訓練(経験)が最低1時間以上それぞれ必要です。
こうした経験がないと許可承認が取れないため、屋外で特定飛行をするにあたっては経験を積んでおく必要があります。
ただ、東京に在中の方などは、なかなか近くに許可承認不要で飛ばせるところがなく、練習ができないという方も多いかと思います。そういった場合、屋内での飛行であれば航空法は適用外となるので、基本的には自由に飛ばせます(その建物の所有者などの許可は必要になります)。そのため、体育館など広い場所があるところで飛行訓練を行い、経験を積む方もいらっしゃいます。私は、田舎の実家が広いので、家の中で練習しました。また、田舎であれば、許可不要で飛行が可能な場所も探しやすいため、練習という意味ではしやすい環境でした。いまは都内に居ますが、許可不要で飛ばせる場所はほとんどなく、厳しい環境です。スクールに通うことも検討してみましょう。
ドローンを飛ばすまでの全体像・流れ
ここからは、具体的にドローンを飛ばすにあたって必要なことを見ていきます。
まずは全体像を把握しましょう。
ドローンを購入した後、飛ばすまでにやらなくてはならないことは、大きく分解すると以下のようになります。
※屋外で飛行するという前提です。
- DIPSアカウントを開設する
- DIPSアカウント上で機体(ドローン)登録申請を行い、登録番号を発行する
- 機体に登録番号を表示させる(テプラ等で貼る)
- 飛行内容に合わせた適切な飛行許可承認申請手続きを行う
- 許可書(許可承認)が発行される
- 飛行場所に応じて航空法以外の手続きも行う
- 飛行計画の通報を行う
- 飛行を実施する
- 飛行日誌を付ける
このページでは、航空法に基づく手続きを中心に見ていきますが、航空法以外の法律・規制に引っかかることもあります。
そのため、①から⑧までを見ていく中で、航空法以外の許可や届出についても簡単に触れておきたいと思います。
なお、以下キャプチャ画面なども表示させていますが、適宜システムが修正され、画面が変わることがあります。そのため、全く同じではない可能性がありますがご了承ください。流れはある程度わかるものと思います。また、国土交通省HP掲載機である、資料の一部が省略できる無人航空機である前提で記載しております。
ドローンを飛ばすまでに必要となる各手続きの詳細
上記で記載した、各項目を見ていきましょう。
1.DIPSアカウントの開設
まずは、DIPSアカウントを作成しましょう。一部の申請を除き、飛行許可承認申請は基本的にオンライン(DIPS)で行うこととなります。それに必要となるアカウントの開設を行います。
アカウント開設から機体登録まではそれほど難しくないため、多くの方が自力でできるかと思います。DIPSアカウントの開設については、国土交通省のDIPSからアカウント開設より行うことができます。
なお、最初の画面で、下記画像の青枠内のチェックができず、次へ進むが押せないと躓く方がいらっしゃるのですが、利用規約などをすべて読まないとチェックができないため、しっかり最後までスクロールさせてください。
その後、個人の方であれば、進んでいくと本人確認が求められます。個人であればマイナンバーカードで本人確認が可能で、スムーズです。
法人は必要な情報を入力していきますが、先々の機体登録をスムーズに行うことを考えると、gbizIDプライムを取得しておくことをおすすめします。
そのまま進めていくと、DIPSアカウントのログインID等が発行されます。
もっと詳しく知りたいかは以下の記事をご参考ください。
2.機体登録をし、操縦者登録を行う
DIPSアカウントの開設ができたら、次に機体登録を行っていきます。ここでは改造機などの特殊な機体ではない前提で話を進めていきます。
機体登録がされていない100g以上のドローンは、原則として屋外の飛行が禁止されています。屋外で飛行させようと思ったら、登録する必要があります。許可承認が不要な飛行であってもです。
また、機体登録とは別に、ドローンを識別するためのリモートID機能を備え付ける必要があります。
まずは、先ほど作成したDIPSのログイン情報を入力し、ログインボタンを押します。
ログイン後、「登録手続き等はこちら」、ボタンを押していただき、「無人航空機の登録手続きへ」ボタンを押します。
すると、以下のような画面になると思いますので、新規登録ボタンを押します。
新規登録を押すと、所有者の本人確認方法選択画面へ遷移します。
個人の場合は上記のような画面となります。マイナンバーカードであれば、手間がかかりませんが、その他の方法も可能なため、選択した方法における指示に従い本人確認を行いましょう。
一方で、法人の場合はgBizIDプライムが必要です。IDが無ければ紙で郵送申請又は代理人申請が必要です。そのため、アカウント作成のところにも記載しましたが、gBizIDプライムを作っておきましょう。
その後は、手順に従って入力を行っていくだけです。
また、申請し、完了後、機体登録の手数料の納付も忘れないようにしましょう。
本人確認方法 | 機体申請時の納付方法 |
---|---|
・マイナンバーカード ・免許証 ・パスポート ・gBizIDプライム(法人) | ・クレジットカード ・ペイジー(ATMorネットバンキング) |
郵送 | ペイジー(ATMorネットバンキング) |
屋外での飛行において、機体登録は必須です。
3.機体が登録できたかを確認し、登録番号をドローンに付ける
登録記号(JUから始まるやつ)をテプラなどで印刷し、機体の側面など、見やすい位置に張り付けましょう。25㎏以上のドローンなのかそうでないのかで、表示ルールに違いがあります。
また、リモートIDをインポートすることも忘れずに行ってください。やり方がわからない方は以下もご参考ください。
これで、機体登録は完了です。
なお、国交省HP掲載機であれば、飛行許可申請画面の機体の詳細な情報の入力は不要ですが、操縦者情報登録は必要です。忘れずに行ってください。一般的なお仕事で必要とされる包括申請を行いたいのであれば、総飛行時間が10時間以上、目視外飛行、夜間飛行の実績がそれぞれ1時間以上最低必要です。
機体登録のやり方については以下の記事で詳細に解説しております。詳しくは以下をご覧ください。
4.飛行許可承認申請を行う
機体の登録ができたら、ようやく飛行許可申請をすることができます。
許可承認申請が必要となるのは、特定飛行に該当する場合です。
具体的には、以下です(10通り)。
■飛行空域(許可が必要)
- 高度150メール以上の上空
- 空港等の周辺
- 人口集中地区の上空
- 緊急用務空域
※緊急用務空域は基本的に一般のドローンにおける飛行許可は出ません。
■飛行方法(承認が必要)
- 夜間の飛行
- 目視外飛行
- 人又は物件と一定の距離(30m以上)を確保できない飛行
- イベント等の催し物上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件の投下
これらに該当する場合、許可が必要です。
逆に言えば、どのような目的で、どのような場所で飛行させることがあるのかをまとめた上で許可取りをすべきです。
包括申請をとりあえず取っておこうとお考えになるのは間違いではないのですが、一方で、包括申請では飛行させられない飛行を行い、違反しているケースもあるため、一度飛行プランを整理することをおすすめしたいです。また、飛行マニュアル違反も多いため、飛行マニュアルを書き換える必要性の有無の判断のためにも必要かと思います。
そのうえで、許可承認申請を行っていきましょう。
具体的な個々の内容については、以下のページをご参考ください。
また、包括申請のやり方などについては包括申請とは?のページで解説しているため、このページでは省略します。
これらの許可承認申請は基本的にDIPS上で行います。ただ、一部の高度な申請にあたっては、DIPS上ではできず、紙申請(メール)を行う必要があります。
なお、資料が省略できない機体の場合は、別途詳細な画像や資料、情報の入力が必要となります。
5.許可承認
申請に不備がなければ許可書が発行されます。
以下は期間を1年、飛行場所を全国、許可内容を目視外飛行、夜間飛行、人又は物件からの距離30m未満の飛行、DIDの4つのいわゆる包括申請を行った際の許可書です。
許可書をよく見ると、飛行マニュアルを遵守して飛行させることを条件として許可が下りていることがわかるかと思います。
違反しないためにも、改めて飛行マニュアルを必ず確認しましょう。
航空法以外の許可や届出を忘れずに行う
ここで出た許可は、あくまで航空法に基づくものです。
条例でドローンの飛行が禁止されていたり、土地管理者等により制限されていたりすることは多々あります。
また、道路の上空などは交通に影響がある場合は自由にドローンが飛ばせるとも限りません。場合によっては道路使用許可が必要です。交通量の多い道路であれば航空法的にも個別申請が必要です。
その他、国有林、河川、国の重要施設(小型無人機等飛行禁止法)、公園など、注意すべき事項が多数あります。
結局のところ、飛行許可承認申請も含めて、何の届出や許可もせずに飛行できるケースというのはあまりありません。
面倒ですが、一つひとつ確認しましょう。
なお、一般市民から、怪しいドローンが飛んでいるということで警察に通報されることがあります。このの対策として、人通りの多いところでドローンを飛ばすことがあるならば、事前に管轄の警察署へ連絡をしておくということもやっておいた方がいい場合があります。これは飛行させる場所などにもよりますが、通報されそうだなと感じる場所の場合は言っておいた方がスムーズです。
6.飛行計画の通報を行う
許可が取れたらそれで終わりではありません。
実際に飛行させるにあたっては、いつどこで飛ばすかなどを通知する必要があります。これを飛行計画の通報と呼びます。特定飛行に該当する場合は義務とされていますが、特定飛行に該当しなくても推奨されているため、基本的には行うものと考えておいてよいでしょう。
同じくDIPS画面上でできます。
飛行目的、飛行空域、飛行方法など各種入力を行ってください。やり方はそれほど難しくありませんが、他の人と飛行が被ると面倒なため、ご注意ください。
7.実際に飛行させる:ようやくここでドローンを飛行させることが可能となる
飛行計画の通報を行ったら、実際の飛行を行います。
飛行マニュアルにも記載されていますが、飛行前の点検なども含め、しっかりと行ってください。
なお、飛行当日は、許可書や飛行日誌などを携帯するようにしてください。
8.飛行日誌
ドローンを飛行後、飛行日誌も義務です。
なぜか飛行日誌の機能はDIPSについていないため、別途自分でシートを作るか、アプリで管理をする必要があります。どのような形態でも構わないのですが、意外とやらない方が多いので、気を付けてください。
点検・測量・空撮などでドローンを飛ばすには?
ドローンを利用するシチュエーションごとに、求められる許可内容や注意点が異なる場合があります。
事業利用に関しては、それぞれのページで細かく記載しておりますので、そちらをご覧ください。
ドローンを飛ばすにあたって見落としがちな規制やルール。違反を避けるために必要なこと
無許可での飛行は論外として、違反するつもりはなかったが、うっかり違反していたというケースが多いのがドローンの特徴です。
たとえば、包括申請しかしていないのに、「夜間の目視外飛行をして違反する」というものがあります。包括申請では夜間飛行、DID、目視外飛行の許可を取るかと思いますが、組み合わせでの飛行はできない場合があります。
飛行マニュアルでもそうなっていますので、ご注意ください。ちなみに、個別申請が必要です。
その他の項目も含め、許可された内容以外の飛行をする違反がかなり多くなっており、原因としては、そもそもなんの許可が出ているのか理解できていない、飛行マニュアルを読んでいないというものがあげられます。かならずマニュアルには目を通しましょう。
また、飛行計画の通報を怠る違反はかなり多くなっていますのでご注意ください。
航空法以外ですと、施設管理者に許可を取っていない、私有地で飛行させて私有地の所有者とのトラブルなどもあります。
航空法上の許可があればなんでもかんでも飛ばせるわけではありません。関係する法令もしっかりチェックしましょう。
100g未満のドローンも自由に飛ばせるわけではない
なお、100g未満のドローンなら自由に飛ばせると勘違いしている方もいらっしゃいます。
あくまで、航空法においては100g以上のドローンが規制対象(空港周辺等一部例外有)になっているだけであり、上記で記載した条例や小型無人機等飛行禁止法など、他の法や規制はまた別の話なのでご注意ください。
ドローンを飛行させるまでに行う手続きはかなり多く、しかも変更も多いため注意が必要
ドローンを飛ばすまでの手続きについて簡単に紹介しました。
これらの手続きは、しょっちゅう変更になっており、正直なところ、変更・法改正についていくのは結構大変です。
そのため、昔しっかりルールを学んだ方でも、知らずに違反してしまっているケースがあるのが実情です。
アロー行政書士事務所では、ドローン飛行許可承認申請の代行サービスや法務相談サービスを行っています。
飛行内容をお伺いさせていただき、適切な許可を取るとともに、違反しないようなアドバイスやサポートをさせていただいております。
ドローンの飛行で心配なことなどがあれば、ご相談いただければと思います。