こんにちは。行政書士の樋口です。本日は、意外と質問が多い目視外飛行について記載していきたいと思います。
ドローンを飛行させるにあたっては、操縦者本人による目視の飛行が求められています。
ただ、現実問題として、モニターを見ながらの飛行が必要になる場面やドローンが見えない位置に入っていく飛行は多いため、目視による飛行が難しいケースが多くなっています。近年はFPVゴーグルをつけての飛行も多いかと思いますが、これも目視外飛行に該当します。
こうした目視外飛行を行うケースにあたっては、承認が必要となります。
なお、実際にドローンを飛ばしている際に、1秒たりともドローンから目を離さないことは難しいのでは?と疑問に思う方も大勢いらっしゃるかと思います。目視内飛行を考えている方であっても、どの程度までドローンから目を離すことがあったら目視外飛行になるのか、不安に思うこともあるでしょう。
そのため、ここでは、目視外飛行の定義や解釈についての説明と、実際に目視外でドローンを飛ばす際に必要な許可・承認申請について記載していきたいと思います。
※ドローンの規制は変化が激しいため、目視外の定義・解釈も変わるおそれがあります。実際に飛行させる際は最新の情報をご確認ください。
※補助者なし目視外飛行(レベル3.5飛行について)はそちらでご覧ください。
ドローンの目視外飛行とは?
目視外飛行とは、操縦者自身がドローンを見ないで飛行させることを言います。
例えば、手元にあるモニターを見ながらの操縦や、建物の間に入ってドローンが見えなくなってしまう状況での飛行、ドローンがものすごく遠くに行って見えなくなってしまう状況などが目視外飛行にあたります。
操縦者自身がドローンを目視している必要があるので、補助者を配置して、補助者がドローンの飛行状態を常に確認していても、操縦者がモニターなどを見ている状態であれば、それは目視外飛行となります。
また、ドローンを遠くまで飛ばすケースにおいて、望遠鏡・双眼鏡などで見ながら飛ばす行為も目視外となります。FPVゴーグルでの飛行も目視外飛行です。
ただし、眼鏡やコンタクトレンズは目視外にあたりません。
目視外飛行に該当するなら、飛行許可・承認申請が必要となります。
一瞬でも目を離したら目視外飛行なのか?
私がドローンに興味を持ち始めたころは、「一瞬でもモニターを見ることがあるなら目視外飛行に該当する」といったような話や「車の運転と同じでスピードメーターを一瞬見るとかは目視内という認識で大丈夫」などいろいろな解釈を聞いたことがあります。当時の国土交通省等のホームページを見ても、具体的な記載はなく、どのくらい目を離していたら目視外になるのかよくわからなかった記憶があります。
時が経ち、2023年9月にカテゴリ―Ⅱ(レベル3)飛行の許可・承認申請に関する説明会というものがオンラインで行われ、国土交通省航空局の資料が公開されているのですが、そこでの質疑応答の記録によると以下のように記載されています。
合は目視外となるのか。
目視内での飛行にあたっては、操縦者が機体及びその周囲の状況を目
視により確認することが必要となりますが、安全飛行するためにバッテリー
残量を確認する程度のモニターの確認は目視内の範疇であると認識し
ております。ただし、モニターを凝視する等により、機体から目を離した場
合は目視外となります。
※参考資料・引用:国土交通省 航空局無人航空機安全課カテゴリ―Ⅱ(レベル3)飛行の許可・承認申請に関する説明会の資料の48ページ目
バッテリーの確認程度は目視内との記載があるので、一瞬確認する程度であれば、目視内飛行と考えて良さそうではあります。
なお、2024年6月11日に国土交通省のホームページで更新された、無人航空機に係る規制の運用における解釈についてにも、上記のような文言が追記されておりましたことを確認しております。
目視外飛行で補助者の配置などの立入り管理措置をしない違反が多い
空撮や屋根点検などで多いのですが、目視外飛行の許可・承認申請(包括申請)はしているが、補助者を配置せずに目視外飛行をしているケースが過去比較的多くあります。
多くの方が標準マニュアル02で包括申請を行っているかと思いますが、目視外飛行も含め、安全管理体制に関する記述は飛行マニュアルに記述してあるかと思います。それを見ていただければ、補助者の配置あるいはそれに代わる措置が必要なことがわかるかと思います。
そもそも飛行マニュアルに目を通したことがないという方もいらっしゃり、補助者が必要なことを知らない方は意外と多くいらっしゃいます。
当然、補助者に代えて立入り管理区画の設定による確実な第三者の立入り制限も行っておらず、完全に1人で違法状態で目視外飛行をし、通報されているケースは多くなっています。
一部の場合を除き、基本的には補助者を配置し、適切な安全確保が必要であることに注意してください。
ドローンを飛ばしたことのある方ならわかるかと思いますが、ドローンの飛行には危険が伴います。カメラから送られてくる映像は実際の状況とラグが出ていますので、うまく操縦できないリスクもあります。
適切な安全管理措置を行い、飛行させてください。
特に近年屋根点検でドローンを導入する方が多いのですが、補助者の配置等の適切な立入り管理措置をしておらず、違反しているケースが報告されていますので、ご注意ください。
包括申請で補助者なし目視外飛行をしたいなら
包括申請による補助者なし目視外飛行(第三者の立入を確実に制限)については以下をご覧ください。
第三者の確実な立入制限ということが条件になりますが、実質的には難しい場合も多いため、ご注意いただきたいです。
FPVゴーグルをつけて飛行(目視外飛行)し、SNSやYoutubeなどにアップして違法が発覚するケースも
SNSやYoutubeに動画をアップロードした結果、違法が発覚するケースも多いかと思います。
FPVゴーグルによる飛行だとDJI Avata 2が最近多いかと思いますが、そこまで技量が高くない方でもFPVゴーグルでアクロバティックな飛行・撮影ができることから、初心者でも購入される方がいらっしゃいます。
それにあたり、FPVゴーグルをつけての飛行が目視外飛行にあたることを理解していないのか、補助者の配置などを行わないなどの指摘はよく見られます。
補助者の配置等の立ち入り管理措置はかなり面倒ですが、ルールを守らないと危険なのはもちろんなのですが、あなた自身が大きな不利益を被るため、注意したいところです。
なお、レベル3・3.5飛行については別のページで解説しております。そちらのページをご参照ください。
ドローンの目視外飛行の許可承認申請(包括申請)では追加基準に適合させる
目視外飛行に該当する場合、承認申請が必要なことをここまでで何度か記載しました。実際に申請するにあたっては、DIPSというシステム上で申請を行います。
それほど難しい申請ではありませんが、目視外飛行に係る追加基準に適合する必要があります。
※長文になってしまうため以下審査要領を省略した記載を行っています。
●機体について以下の基準に適合
・自動操縦システムを装備し、機体に設置されたカメラ等により機体の外の様子を監視できる
・地上において、無人航空機の位置及び異常の有無を把握できること
・フェールセーフ機能が正常に機能すること
●操縦者の技量
・モニターを見ながら遠隔操作により意図した飛行経路を維持しながら安全に飛行、着陸させることができる
●安全確保の体制
・障害物等を事前に確認し、適切な飛行経路を特定する
・飛行経路全体を見渡せる位置に、飛行経路、気象状況の変化を常に確認できる補助者を配置し、安全に飛行させることができるよう必要な助言を行う
等
実際に許可承認申請を行うにあたっては、各項目を順次クリアしていけば条件がクリアできるようになっています。
注意点としては、許可承認申請時に、「メーカー指定の自動操縦システムを装備し、、、」を選択して承認を受けると、他の飛行アプリが使えなくなってしまうのでご注意ください。
メーカー指定の自動操縦システムを利用するのであれば資料が省略できるので簡単なのですが、複数の飛行アプリを入れるケース、改造による自動操縦アプリを入れるケース、そもそも自動操縦をしないケースもあるため、必要に応じた記載をするようにしてください。
また、目視外飛行にあたっては、申請する前に一度飛行マニュアルを読んでおくことをおすすめします。
本当にあなたが実現したい飛行がこのマニュアルの内容で飛ばせるのか?も含めてご確認ください。
機械的に訳も分からず申請し、どんな許可・飛ばし方ができるのかを理解せずに違反しているケースが多くなっています。
夜間における目視外飛行は包括申請ではできない
夜間飛行、目視外飛行の包括申請をしているから夜間の目視外飛行も問題なくできる、と思っている方は多いのですが、夜間における目視外飛行は包括申請ではできません。
個別申請が必要です。
先ほども記載しましたが、これも飛行マニュアルに記載されています。
詳しくは、夜間における目視外飛行とは?のページをご参照ください。
目視外飛行以外の項目や航空法以外の規制にも注意が必要なため、行政書士への相談も有効
ドローンを飛ばすための手続きは意外と面倒です。
単に目視外飛行を含めた包括申請をするだけでは済まず、飛行場所や方法に応じたさまざまな規制やルールがあります。それに伴って何をどう手続きすればいいのかわからないという方も多くいらっしゃいます。
適切な申請や届出、承諾を得ずにドローンを飛ばし、違反をする事例(航空法違反であれば罰金50万円等もあります)も増えています。
バレないと思っている方もいるのですが、途中で記載したとおり、撮影データなどから違反が発覚することもあります。
目視外飛行を含め、特定飛行に該当する場合、まずは航空法における飛行許可・承認を取得しましょう。そのうえで、飛ばす場所などに応じて、さらに必要な手続きを進めましょう。
許可・承認申請にあたっては、行政書士に相談し、代行してもらうのも有効です。
当事務所でもドローンの飛行許可承認申請のサポートを行っております。
気軽にご相談いただければと思います。
なお、包括申請のやり方や、目視外飛行も含め、どういった飛ばし方に対応しているかを知りたい方は以下の記事もご参考ください。