地表または水面から150m以上の空域でドローンを飛行させる場合、特定飛行に該当するため、許可申請が必要です。
この特別な許可が求められる理由は、150m以上の高度が有人機(飛行機やヘリコプター)が飛行する空域であり、衝突のリスクが伴うためです。安全を確保するため、関係各所と調整し、許可を取得する必要があります。
調整が必要な申請であるため、手間と時間がかかるケースが多く見られます。補正対応が必要になることも頻繁にあるため、余裕を持ったスケジュールでの対応が重要です。
この記事では、ドローン飛行許可申請における、高度150m以上の空域での申請方法や申請先、許可の要否について詳しく解説します。
なお、アロー行政書士事務所では、飛行許可申請の代行やサポート、相談業務を行っています。申請に関してお困りのことがあれば、ぜひお問い合わせください。
高さ150mとはどこからどこまでを言うのかをまずは確認する
あくまで、「地表または水面から150m以上の高さ」の場合に許可が必要となります。
高さを表す用語として、標高や海抜といった言葉がありますが、ここで言う150m以上の上空を考える際には、基本的にこれらを気にする必要はなく、現在いる地面からの高さであることにご注意ください。
上記の図のように、山や丘の頂上でドローンを飛行させても、地面から30mの高さであれば許可は不要です。しかし、図のように右側にドローンを移動させている間に、高さが150mを超えてしまうことがあります。特に、傾斜が急な山などでドローンを飛行させる場合は注意が必要です。
極端な例であり、現実的にこのような場所は考えにくいのですが、趣味で山で飛行させる方がいらっしゃり、その際に違反するケースが稀にあります。
建物やビルの屋上から飛行させた場合、屋上は地面ではないので注意
ビルや建物の屋上からドローンを飛ばす場合があります。たとえば、何かイベントを行う際に、屋上が駐車場になっている場所でドローンを飛ばすことなどが考えられます。
その場合、飛行高度はビルの屋上からではなく、地表からの高さで計算されます。つまり、ビルの高さ分も含めて150mを超えると許可が必要です。
念のための記載となりますが、十分にご注意ください。
150m以上の空域の許可の適用除外
高層の構造物から30m以内の飛行であれば、飛行禁止空域から除外されるため、当該許可は不要です。
高層建物の外壁点検など、特定の作業においては、この適用除外の対象となることが多くなっています。
ただし、これはあくまで150m以上の上空における特定の条件下での許可が不要であることを意味しており、他の規制や許可要件が適用されることがあります。例えば、人口集中地区(DID地区)や人又は物件から30m未満、特定の禁止区域での飛行には、別途許可が必要です。特に高層建物は都市部に多いため、これらの地域ではDIDに該当する可能性が高く、適切な許可を取得する必要があります。
基本的に包括申請は行っている方が大半なので、航空法上は大丈夫なケースが多いかと思いますが、念のためご注意ください。
150m以上の飛行の許可申請が必要な例
先ほどの山での飛行の図は極端な例ですが、傾斜のきつい土地での測量や工事などでは、同様の状況が発生し得ます。
崖や谷など、急に標高が低くなる場所では、150m以上の高度での飛行に該当してしまうことがあります。このような場合には、許可を取得する必要が発生する可能性はあります。
また、高層建物を上空から撮影するために150m以上の高度での飛行が求められる場合も、許可が必要です。ただし、建物の点検などで撮影を行う場合、対象建物から30m以内での飛行に限定されることが多く、その場合は許可が不要となります。
その他、花火大会の撮影やドローンショーなどでも150m以上の高度での飛行が必要となる場合があり、その際には許可申請が必要です。
申請先・申請方法・調整先など
150m以上の空域での飛行の許可申請は、空港事務所に対し申請を行います。DIPS画面上での選択は空港事務所(東京空港事務所又は関西空港事務所)となります。
ただし、申請を行う前に、いくつかの調整・確認をしておくべき事項があります。
関係機関との調整
申請前に、各関係機関との調整を行う必要があります。申請そのものよりも、この調整が手間となることが多いです。
どの機関と調整が必要になるかは飛行ごとに異なるため、ご注意ください。
一般的には、航空交通管理センターや管制機関、自衛隊などとの調整が必要です。また、空港等の周辺で飛行する場合、高さ制限を超えることがあるため、空港等周辺の許可も必要となる場合があります。
飛行経路を作り、飛行マニュアルにも目を通しておく
調整・申請にあたり、飛行計画を伝える必要がありますが、場所や範囲、飛行経路、日時等詳しい情報が必要なため、計画がまとまっていないと厳しいでしょう。
飛行内容によっては、標準マニュアルでは対応できない場合があります。そのため、独自の飛行マニュアルが必要になることもあります。標準マニュアルを確認し、修正が必要かどうかを早い段階で確認することが重要です。マニュアル違反は頻繁に見られます。
飛行高度
申請にあたっては、飛行高度の入力が求められます。具体的には、「地表からの高度」および「海抜高度」があります。海抜高度については、国土地理院地図で該当箇所の標高を調べ、その高度を加えることで計算します。
関係機関との調整を行い、最終的にはシステム上で入力を行います。
追加基準について
150m以上の飛行の許可承認申請にあたっては、機体に関する追加基準と安全確保体制の追加基準、その他通知に関する項目があります。
機体の追加基準
航空機等から視認できるように灯火や塗色を行う必要があります。これらができていることを示すため、書類を添付する必要があります。
ただし、国土交通省の資料の一部を省略できる機体の掲載機の中で、飛行形態区分Bに該当するものであれば、こうした書類省略が可能です。
そうでない場合、灯火の装備や機体が認識しやすいよう塗色した写真や資料を取り、添付する必要があります。
安全確保に関する追加基準
安全を確保するために必要な体制について、
・空域を管轄する関係機関から当該飛行について了解を得ること。
・無人航空機を飛行させる際には、関係機関と常に連絡がとれる体制を確保す
ること。
・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況
の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行さ
せる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。ただし、
目視外飛行において、審査要領記載の5-4(3)c)に掲げる基準に適合する場合及び5-4(3)c)ただし書に該当する場合は、この限りでない。
・飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないよう注意喚起を行う補
助者の配置等を行うこと。ただし、目視外飛行において、審査要領記載の5-4(3)c)に掲げる基準に適合する場合及び5-4(3)c)ただし書に該当する場合は、
この限りでない。
通知
審査要領には、150m上空での申請を行った場合について、「航空情報の発行手続きが必要であるため、以下の対応を行う体制を構築すること。」との記載があります。
以下の対応を行う体制を構築すること。
・飛行を行う日の前日までに、その飛行内容について飛行する場所を管轄する空
港事務所長等(以下「管轄事務所長等」という。)へ、以下の項目を通知するこ
と。なお、予め管轄事務所長等から通知先を指定された場合には、指定された
機関へ通知を行うこと。
a)飛行日時:飛行の開始日時及び終了日時
b)飛行経路:緯度経度(世界測地系)及び所在地
c)飛行高度:下限及び上限の海抜高度
d)機 体 数:同時に飛行させる無人航空機の最大機数
e)機体諸元:無人航空機の種類、重量 等
・日時及び空域を確定させて申請し許可を取得した場合には、申請内容に応じて
航空情報を発行することとするため、飛行を行わなくなった場合には、速やか
に管轄事務所長等に対し、その旨通知すること。
150m上空の申請は手間がかかる
150m以上の空域での飛行は、安全の観点から、審査も厳しく、時間がかかります。
申請に要する時間はもちろんですが、その前の関係機関との調整にも時間がかかります。加えて、申請後に補正が求められるケースが多くなっています。
時間的に十分なゆとりをもって行うようにしてください。
アロー行政書士事務所では、飛行許可申請の代行やサポートを行っております。ご相談いただければと思います。