林野庁によると、国土面積の7割は森林であり、その森林の約3割が国有林であると記載されています。国有林に該当するエリアが多いことがわかります。
ここでは、国有林も含めて、ドローンを山や森で飛ばすにあたって必要となる手続きについて解説するとともに、飛行させる際の注意点も合わせて記載していきます。
アロー行政書士事務所では、ドローン飛行許可申請の代行サービスを提供しております。国有林で飛ばす手続きはもちろんですが、航空法における飛行許可申請(包括申請・個別申請)でお困りでしたらご相談ください。
山林は国有林と国有林以外の民有林に分類できる
林野庁によると、国有林とは、国が所有する森林・原野であると記載されています。また、森林法によると、国有林は、【国が森林所有者である森林及び国有林野の管理経営に関する法律(昭和二十六年法律第二百四十六号)第十条第一号に規定する分収林である森林をいい、「民有林」とは、国有林以外の森林をいう。】との記載があります。
ここで理解すべきポイントは、山林は、大きく分類すると、国有林とそれ以外(民有林)に分けることができるということ、国が所有する森林が国有林であるということです。
国有林・民有林ごとで山や森の管理者は異なり、それぞれ手続きが異なる
国有林とそれ以外(民有林)に分類できることは理解できたかと思いますが、民有林は更に公有林と私有林に分類できます。
ドローンを飛ばすにあたっては、所有者ごとに必要となる手続きが異なります。
国有林でドローンを飛ばす場合は入林届を提出する
国有林でドローンを飛行させる際は森林管理局へ入林届の提出が必須となります。
森林管理局は全国7つに分けられており、それぞれの飛行場所ごとにおける管轄の森林管理局へ入林届を提出することとなります。
注意点は、それぞれごとに微妙に手続き書類が異なるということです。なので、飛行させる森林を管理する管理局に必ず事前に確認するようにしてください。入林届自体の作成自体はそれほど難しくありませんが、決まった様式で地図に飛行ルート等を記載する必要があるため、管理局に地図を提供してもらう必要がある場合もあります。
また、航空法における飛行許可書の提出が求められることもあるため、先に飛行許可申請を行っておいた方が良いでしょう。
入林届自体は以下各所のサイトより閲覧可能です。
提出は郵送あるいはメールとなりますが、確認の上提出するようにしてください。郵送が必須の場合、書類の往復に時間がかかるため、スケジュール的に余裕を持って手続きを進めてください。最近はほとんどメールで済む印象です。
参考:関東森林管理局、北海道森林管理局、東北森林管理局、中部森林管理局、近畿中国森林管理局、九州森林管理局
なお、国有林は、国土地理院地図で調べることができますが、だいたいのエリアが記載されているに過ぎない(表示されない場合も)ので、しっかりと林野庁の地図で確認するか、森林管理署に正確な位置関係を確認するのがよろしいかと思います。
公有林(民有林)は都道府県・市町村管理
国有林よりも民有林の方が手続きに手間がかかることがあります。ただ、公有林であれば、管理者がハッキリとしているため、比較的手続きは簡単です。
基本的に、公有林の管理者は、都道府県、市町村であることが大半です。手続きの方法や飛行の可否はそれぞれごととなりますが、自治体の管轄部署に問い合わせれば手続き内容はわかりますので、まずは管轄の管理者へ連絡をするということから始めてください。それほど難しくない場合が多い印象です。
私有林(民有林)は個人や法人が管理している(登記)ため承諾を得ることが難しい場合が多い
私有林の所有者(登記上の所有者)から承諾を得ることは困難な場合が多くなっています。
所有者が法人であれば連絡を付けることが可能なケースは多いのですが、個人所有で、しかも複数の個人が混在しているケースではやっかいな場合が大半です。
ただ、所有者が個人でも、その一帯の管理を別の団体に任せているケースも多いため、こうした団体経由で承諾を得ることが可能な場合もあります。
特に観光地など人が来ることが前提となっているような山林であれば、基本的に「観光協会」等の団体が管理しているケースが多くなっています。飛行に際して料金を取られることもありますが、まずは確認してみましょう。
いずれにせよ、所有者や管理者を調べることから始め、連絡を付ける必要があります。
国有林等の上空を通過するだけなら基本的に入林届は不要
国有林の中に入って飛行させるのであれば入林届が必要ですが、遠方から飛ばし、国有林の上空を通過するだけといったケースであれば、入林届は基本的に不要です。
心配なケース、迷うケースは飛行内容を管理者に伝え、届出が必要かどうか確認をしましょう。
航空法における手続き(ドローン飛行許可申請)
国有林なのか民有林なのかに関わらず、特定飛行に該当する場合は、飛行許可承認手続きを行いましょう。
山や森での飛行なら「人モノ30m未満の飛行」と「目視外飛行」があれば飛ばせるケースは多い
山・森でドローンを飛行させるにあたっては、人又は物件から30m未満での飛行の承認と目視外飛行の承認があると良いでしょう。
観光客を含めた「人」に遭遇する機会が多くある他、電線や電柱、ガードレール、標識、コテージなどの物件に該当するものも意外と多くあります。
事前に下見をし、飛行予定地に何もないとわかっているなら問題ありませんが、物件に該当するものは多くあります。人又は物件から30m以上を保って飛行させることは山でも難しい場合が多くなっています。
また、基本的に目視外飛行をする方が多いため、この2つは最低限申請しておきたいところです。
そのため、簡単な飛行であっても包括申請はしておきましょう。
山林であればDIDでないケースが大半であり、目視外飛行も行わないから許可不要で飛ばせると考える方は多くいらっしゃいます。ただ、物件に該当するものは山林にも結構ありますのでご注意ください。
飛行内容に合わせた適切な許可承認手続きは行ってください。
自然環境を破壊しない、動植物に注意
国有林等には珍しい鳥や植物等があります。
これらを破壊しないようにするのは当然なのですが、逆にこうした鳥等にドローンを攻撃されて撃墜されてしまうケースもあります。
鳥の巣の近くにドローンを接近させてしまうと縄張り意識から攻撃を受けることもあるため、こうした場合は速やかに飛行を中止させるなどの措置を取るようにしましょう。
山や森では電波障害で墜落するリスクもある
さまざまな要因で電波障害が発生しやすい場所です。
そのため、墜落リスクはそれなりにあります。
問題は墜落させてしまった際に、ドローンが見つからないケースです。
墜落させたドローンを放置した場合、不法投棄で廃棄物処理法違反による罰則を受ける可能性があります。
また、ドローンにはバッテリーが積まれているため、最悪の場合、山火事の恐れがあります。
ドローンを墜落させ、見失い、どうしても見つからない際の手続きとして、国交省への事故報告の義務がありますが、それに加え、山林管理者への連絡、警察への遺失物届の提出、保険に入っていれば保険会社への相談を行いましょう。保険に関しては、無くした場合は保険不適用と言うケースもありますが、相談の余地はあるかと思います。
いずれにせよ、義務と果たすとともに、安全を第一に考え、しかるべき場所へ報告し、必要な対応を検討する必要があります。
山林でのドローン飛行を軽く考える方も多いため、ご注意ください
飛行許可申請の相談をする中で、山だから最悪墜落しても大丈夫(迷惑をかけない)、許可なくてもバレない、などといったことをおっしゃる方がいるのですが、ここまでで説明した通り、大丈夫ではありません。
自然環境やその他の方々の安全を守るということも重要なのですが、自分を守るという意味でも、適切な体制、適切な許可や承諾等を得た上で飛行させるようにしてください。
保険に入っている方も多いと思うのですが、違反した飛行をした場合、保険がおりないケースもあります。
軽く考えず、慎重に飛行させるようにしましょう。
飛行許可申請等でお困りであればご相談いただければと思います。