包括申請ではできない個別申請が必要なドローンの飛行にはどんなものがある?包括申請でできること、できないことと個別申請を理解する

ドローンの飛行において、包括申請はしているが、個別申請はやったことがないという方は多い印象です。

ただ、そういった方の中には、本来個別申請が必要なのにも関わらず、それを知らずに違反して飛行させてしまっている方も多いです。包括申請をしているから大丈夫、と思い込んでいる方も多いです。

そのため、このページでは、個別申請が必要となる飛行について見ていきたいと思います。

なお、一般的に包括申請という場合、「飛行範囲を日本全国」、「期間を1年」、許可承認項目を、「DID(人口集中地区)」、「夜間飛行」、「目視外飛行」、「人又は物件から30m未満での飛行」の4項目での許可承認手続きを指します。
※農薬散布を行う方の場合等、危険物輸送・物件投下が混ざることもあります。

この4項目で許可承認を得ておけば、航空法においては多くの案件で飛行が実現できることが多くなっており、基本的な申請となっています。

なお、アロー行政書士事務所では、個別申請はもちろんですが、包括申請でお困りのケースでも気軽にお問い合わせください。

包括申請では飛行できない個別申請が必要となる飛行パターン

ドローンの飛行において、個別申請が必要となる飛行場所・飛行方法は以下となります。

意外と見落としがちなのが、以下④の交通量の多い道路付近での飛行です。包括申請で飛行させて違反しているケースは多い印象があります。
※今後、機体認証と技能証明(国家資格)制度が進んだ場合、一部個別申請不要なものもあります。

■個別申請が必要となるよくある飛行ケース

  • 夜間の目視外飛行
  • DIDで夜間飛行
  • DIDで夜間に目視外飛行
  • 交通量の多い道路・高速道路・鉄道の上空やその付近での飛行
  • 高さ150m以上での飛行
  • 空港等周辺での飛行
  • イベント上空での飛行
  • 研究開発目的の飛行
  • 趣味・訓練飛行
  • レベル3.5飛行(補助者なし目視外飛行)

個別申請といっても、飛行経路と日時の双方を指定しないといけない場合もあれば、経路の特定は必要だが期間は1年間で取れる場合もあります。

また、申請をすれば簡単に許可が下りるというものでもなく、求められる基準(安全確保のための体制等)も高いため、申請難易度も高いものがあります。

簡単にそれぞれを見ておきましょう。

夜間の目視外飛行は個別申請が必要

包括申請をしている方が知らずに違反しているケースで多いのが、夜間の目視外飛行です。

包括申請で夜間飛行、目視外飛行の項目で許可を取得していたとしても、この2つを組み合わせた条件での飛行は飛行マニュアルで禁止されています。包括申請で独自マニュアルを作ったとしても、基本的に夜間の目視外飛行は包括申請ではできません。場所を特定した個別申請の必要があります。

早朝、あるいは夕方など、夜間に該当する時間帯に近い時刻で飛行させる場合は注意が必要です。

また、Avata2など、FPVゴーグルをつけて飛行させる場合は目視外飛行になります。初心者の方は知らずに違反するケースがあるのでご注意ください。

夜間の目視外飛行はさまざまな申請で関連するケースが多くなっており、たとえば夏であれば花火大会での飛行が代表例でしょう。

イベント上空でありつつ夜間の目視外飛行となると申請は少し大変です。

個別申請をする際に、飛行場所・飛行内容に合わせて、独自飛行マニュアルを作成する必要がありますが、状況に合わせて夜間の目視外飛行における体制をしっかりと記載し、申請するようにしましょう。

花火大会等だと水上にドローンが落下する可能性なども考慮する必要があります。

夜間におけるDID(人口集中地区)での飛行は個別申請

夜間のDIDでの飛行も包括申請ではできません。これも標準飛行マニュアル02に記載されています。

DIDでの飛行も夜間の飛行も単体で見ても危険度が高いことはわかるかと思います。そのため、個別申請が求められます。

夜間にDIDで目視外飛行は危険度が高く個別申請が求められる

夜間のDIDでの目視外飛行も当然包括申請ではできません。個別申請が必要です。

この場合、日時指定での申請となります。

交通量の多い道路付近、鉄道付近、高速道路付近での飛行も個別申請をしておく方が良いケースは多い

包括申請で利用する飛行マニュアル2には、交通量の多い道路や高速道路、鉄道の上空・付近での飛行が禁止されています。したがって、交通量の多い道路付近、高速道路付近、鉄道付近での飛行を行う場合、個別申請を検討する必要があります。

難しいのが、何をもって交通量が多いとするのか、「付近」とはどの程度の距離を指すのかということです。

これらは明確な定義がなされているわけではありません。交通量に関しては、この道路はダメ、良い、などが決められているわけではありません。付近という言葉についても、飛行させる日の風速や高度、天気、機体の重さなどによって適宜距離感は変わってきます。

少なくとも、国道等の幹線道路での飛行であれば、個別申請はしておいた方が良いと考えます。

また、ドローンが何らかの要因で墜落する際に、道路や鉄道等に入ってしまう可能性があり、大きな事故・交通の妨げになるおそれがあるのであれば、個別申請することを検討しましょう。適切な申請をしていたかどうかで、万が一事故を起こしたときのリスクが変わってきます。

なお、インフラ点検を専門に行う場合におけるドローン活用においては、インフラ点検用のマニュアルを利用することで包括申請の範囲内でこれらの場所での飛行も可能です。インフラ点検事業者の場合、毎度個別申請をしていては困ってしまいますので、インフラ点検用の申請を検討しましょう。

この違反は意外と多いので、ご注意いただきたいことから、少し長めの記載となっています。

150m以上の高さ上空での飛行は個別申請

ほとんどの方がご存じですが、150m以上の高さでドローンの飛行をさせる場合は個別申請が必要です。有人機が飛行する高度になってくるため、接触のリスクがあるからです。

関係各所との調整が多くなるため、スケジュール的に余裕を持った申請をする必要があります。

詳細は以下ページをご覧ください。

空港等周辺での飛行も個別申請

有人機との接触の危険もあり、危険な場所ですので、個別申請が求められます。飛行許可申請とは別に、DJI社の機体を利用する場合においては、ロック機能に注意しましょう。

なお、申請においては、調整に時間がかかることもあるため、スケジュールに余裕を持つ必要があります。

イベント上空での飛行

イベント上空での飛行は申請が難しくなる傾向にあります。イベントが夜間に該当するケースがある他、150m以上での飛行が求められるケースもあり、飛行できる機体も限られるケースがあります。

イベント上空、夜間の目視外飛行、150m以上の上空での飛行となるとかなり大変です。

ドローンを飛ばす目的が達成できればいいので、イベント上空に該当しない位置での飛行を検討するケースも多いです。

なお、申請にあたっては日時の特定まで必要なので、予備日も含めてしっかりと考えた申請を行う必要があります。

研究開発・趣味・飛行訓練用の申請も個別申請

研究開発や趣味、訓練用の申請も個別申請です。

趣味飛行の申請を代行したことはありませんが、ほとんどの方が何らかの業務である、という体で包括申請をしているケースが多いかなと思います(SNSでの動画広告収入目的も業務と考えられるため)。

飛行訓練での申請も個別申請ですが、毎回申請するのは手間ですので、屋内での飛行と係留装置を活用しているスクールも多いかなと思います。以前はスクール生の飛行許可申請も係留もしておらず、無許可で飛行させてしまっていたケースもあったようです(訓練においては経験豊富なインストラクターが指導する場合においてインストラクターが許可を取得していれば訓練生は許可不要という勘違いがあったことがあることによる違反)。

補助者なし目視外飛行(レベル3.5飛行)

レベル3.5飛行は、飛行経路図の提出が必要であり、経路の特定が必要です。

レベル3飛行の申請経験がなくてもレベル3.5飛行の申請は可能ではありますが、基本的にレベル3飛行を過去にやったことがある事業者が優先されており、審査に時間はかかります。

また、レベル3.5飛行では、求められる要件が厳しいため、一般的な空撮ユーザーが気軽に申請するものではないことをここに事前に記載しておきます。

申請自体は結構手間がかかります。当然飛行を実現させるにあたって求められる体制も厳しいです。

レベル3.5飛行の申請を検討されている事業者様でお困りであればご相談ください。

包括申請でも補助者なし目視外飛行ができるケースもある<補足事項>

基本的に補助者の配置は必須ですが、補助者の配置に代えて、立入管理区画の設定を行い、第三者の立入りを確実に制限できる場合は補助者なし目視外飛行ができるケースがあります。

標準マニュアル02で禁止されている包括申請ではできない飛行をする場合は個別申請を検討する

このページで記載した事項のほとんどが、飛行マニュアルで禁止されている飛行内容となります。

つまり、飛行マニュアルをしっかり見ていれば、どのようなときに個別申請が必要となるのかが見えてきます(単純に飛行マニュアルの書き換えで対応できる項目もありますが)。

既に包括申請をお持ちの方であっても、飛行マニュアルを読んだことがない、という方は残念ながら多数いらっしゃいます。それはあり得てはいけないことなのですが、ドローン飛行許可申請のフロー上、飛行マニュアルは読まなくても、知らなくても、理解していなくても問題なく許可自体は取れてしまいます。

飛行マニュアルを遵守することが許可条件なのでくれぐれもご注意ください。

飛行マニュアルを見れば、包括申請でできること、できないことは理解ができるようになっています。

包括申請でできることは?

許可項目をDID(人口集中地区)、目視外飛行、夜間飛行、人又は物件から30m未満での飛行の4項目の包括申請をしている方が大半かと思います。

この例で行くと、それぞれ単体での飛行は基本的に実現が可能です。ただ、組み合わせの飛行にあたっては、できるもの、できないものがあります。

上記で記載した、夜間の目視外飛行、夜間のDIDでの飛行、夜間にDIDで目視外飛行をすることは、包括申請ではできません。

一方で、DIDで目視外飛行は、原則禁止ではあるものの、体制を強化することで包括申請でも飛行が可能となります。これは標準マニュアル02にも記載されています(近年独自マニュアルにしなくても飛行できるようになりました)。

なお、改めての記載となりますが、標準マニュアル02では、交通量の多い道路付近、鉄道付近、高速道路付近での飛行はできませんので、飛行の形態に関わらず、個別申請が必要なことも改めて記載しておきます。

もし、基本となる包括申請についての理解が怪しい場合、以下の記事もご覧ください。

個別申請ではスケジュールに余裕を持つことを心掛ける

個別申請は、包括申請とは違って飛行ごとの申請となり、シチュエーションもさまざまです。細かな補正が入ることもあるため、時間に余裕をもって行う必要がありますのでご注意ください。

1か月前には申請を行っておきたいところです。

ドローンショーなどであれば、もっと前から申請したいところでしょう。

いずれにせよ、時間的なゆとりをもって申請をしないと、肝心の許可が取れる前に飛行日時が来てしまうというリスクもあるため、ご注意ください。これは、行政書士に申請代行を依頼するケースでも同じです。

ドローン個別申請でお困りであればアロー行政書士事務所にご相談ください

包括申請は自分でやるが、個別申請はお願いしたいという声は多い印象です。

また、最近はドローンショーの申請件数も増えていますが、ドローンショーの場合、機体の台数が数百台、千台以上というケースもあります。この場合、機体登録から行政書士にお願いするケースにおいて、代行先の行政書士事務所が個人事務所の場合だと、その行政書士個人の方が優秀であっても、スピード感的に業務に耐えられない場合があります。他の業務もあり、意外と時間がかかることがあります。

なので、機体や依頼する業務の範囲次第という側面はありますが、依頼する行政書士事務所の規模間にも注意した方が良いでしょう(ちなみに、当事務所も個人事務所です。行政書士は個人事務所が多いため、機体が1,000台以上あるなどの場合は物量的に対応できそうか確認しておきましょう)。

なお、物量の問題以外であれば難しい申請でも個人事務所で対応できる場合は多いかと思います。

個別申請でお困りの方はぜひご相談ください。

執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請の代行を始めとして、各種許認可取得サポートを行っている他、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。ドローンはDJI Mini 3を保有し、撮影しています。
ドローン飛行許可申請ガイドの運営を行っています。ぜひご覧ください。
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所属:日本行政書士会連合会、東京都行政書士会