行政書士試験の難易度についてネットで調べていると、難しい試験なのか簡単な試験なのか判断が付きにくい傾向にあるなと感じました。
3年、4年と長期に渡り勉強している人がいたり、3ヵ月などの短期で合格する人がいたりなど、人によって合格までの期間が大きく異なるからです。
また、試験を受けたこともない人が、あんなの楽だしちょっとやったら誰でも合格できるよ、といったことを言っているケースもあり、デマ・誤った情報が流れていることも難易度が把握し難い要因の一つとなっているでしょう。
実際のところ難しいのか?簡単なのか?一概に定義できるものではありませんが、ここでは、行政書士試験に合格した立場から試験の難易度について解説していきたいと思います。
難関国家資格にカテゴライズされている中では行政書士試験は難易度が低い
行政書士試験の難易度を見ていくにあたって、何と比較して考えるのか、その基準次第で簡単にも難しくもなるかと思います。
所謂「士業」というカテゴリーで見ていくと、「弁護士」「司法書士」「公認会計士」「税理士」「社労士」「中小企業診断士」などがあり、これらが難関資格であることは多くの方がご存じかと思います。
行政書士も上記の士業に分類できる資格ではあるのですが、これらの資格の中では最も試験が簡単であり、合格しやすいというのは事実かと思います。
全ての資格の勉強をしたわけではありませんが、これは間違いないかと思います。
例えば、公認会計士であれば、短答式試験・論文式試験・実務経験・修了考査(3次試験見たいなもの)といった形で、長い長い道のりとなっている上に、各段階の試験の難易度が本当に高く、難しいです。
一方で、行政書士試験はたった1回のペーパー試験に合格するだけで誰でも登録することができます。実務要件もありませんし、何か能力・資質が試されるような試験もありません。
また、行政書士試験受験生のレベルというところで見ていくと、同じ法律系の士業の司法書士試験勉強をされている方が腕試し・肩慣らしという形で行政書士試験を受験されることも多くあり、その時点で司法書士試験よりも簡単に合格できる傾向にあることがわかるかと思います。
行政書士試験は法律系の入門的な資格として位置づけられて説明されることが多いことからも他の法律系難関資格より難易度が低いことがわかるかと思います。
様々な角度で難易度を見ていくことはできるのですが、こうした難関国家資格という括りの中ではどう見ても楽な試験であることは間違いなく、それゆえに行政書士は楽に合格できる、と言われることがあります。
合格までに必要な勉強時間を考えると難易度は高めと言える
難関国家資格の中では簡単であると記載しましたが、勉強時間という視点で難易度を見ていくと行政書士試験が楽な試験ではないことがわかるかと思います。
行政書士試験はどのくらいの勉強時間で合格できるか?合格までに何時間勉強すればいいのか考えてみるのページで詳しく説明していますが、一定の期間で800時間から1000時間程度の勉強が必要です。
私は900時間程度勉強しています。
行政書士試験が11月中旬に行われ、受験申込締め切りが8月です。
仮に8月頭に受験申込をして勉強を開始したと仮定すると、およそ100日間勉強時間が確保できることになります。この100日の間に800時間勉強する必要があると考えると、一日8時間の勉強が必要です。逆を言えば仕事していなくて毎日自由な時間が大量にある人ならば短期合格が可能な試験とも言えます。
これを簡単と考えるか難しいと考えるかは人によるところもありますが、大半の方が何かしら仕事をしながら勉強をしていることを考えると、これだけの勉強時間を確保することは難しいと言えるでしょう。
現実的なラインで考えると、1月や2月頃から勉強を開始し、1日平均3時間ちょっと勉強するといったことが現実的です。
普段の生活の中で毎日3時間以上しっかりと勉強することの難しさがわかりますでしょうか?
私は大変でした。
理論上は一日3時間勉強することは可能です。
朝7時に起きて30分勉強、お昼休みの30分勉強、21時頃家帰ってごはん食べて22時から2時間勉強といったスケジュールを立てることは可能です。
しかし、自分の時間がほぼ確保できませんのでストレスが溜まっていきます。
そのため、大半の方が試験日まで毎日継続的に勉強することができず合格できずに終わってしまうというパターンに陥っています。
そう考えると難易度が高い試験であると言えるでしょう。
なお、参考までに多くの方が取得する簿記検定やFP試験も例にとると、FP2級などは1日1~2時間×3カ月ぐらい(100~150時間くらい)の勉強期間だったかと思います。宅建は2ヵ月か3カ月の間に1日1~2時間程度勉強(150~250時間くらいだと思われる)したでしょうか(宅建は行政書士試験合格後に受験したので、試験範囲が被っていたこともありかなり短い時間で済んでいますので特殊かもしれません)。簿記は勉強時間を気にしていなかったのでわからないのですが、1日30分くらいは勉強した気がします。
正直なところ、FPも簿記も宅建も絶対合格しようといった形で本腰を入れて勉強していたわけではありませんし、難しいと感じることはありませんでした。ただ、それでも結構きつかったです。宅建に至っては行政書士試験と範囲が被っていたからこそ合格できたような気がします。面倒な時はやらなくていいやぐらいの感じで勉強していました。働きながらだと簡単な試験の勉強でも結構ストレスとなり、きつかったです。
簿記2級やFP2級、宅建などのこうしたライトな資格・検定でさえも日々の生活で勉強するのに結構なストレスになってきますので、特に勉強に不慣れな方にとっては、1年近く勉強しなければならない行政書士試験は難易度が高いと言えます。
行政書士試験問題の傾向から難易度を考える
行政書士試験の問題は知識的には基礎的な内容のものが多い傾向です。
そのため、一定度の勉強さえすれば難しすぎて全然わからん、ということにはなり難いです。
法律系の入門的な位置づけであることからも分かる通り、基礎固めができていれば十分合格できるので、楽ではないのですが、頭の良し悪しに関係なく合格ができ、勉強さえすればOKな試験です。
自頭が悪いと合格し難い試験(会計士試験等)もありますが、そうしたタイプの試験ではないので、そういう意味では合格への望みが持ちやすい試験であると言えます。
ただ、行政書士試験は長い問題文を読ませて理解できるかどうかを試すような問題も少なからずあるので、国語力が著しく低いと合格し難い試験かもしれません(活字を読むのに慣れていない方含)。国語が苦手な方はちょっと苦戦するかもしれません。この辺りは別の記事で説明していますので気になる方はチェックして頂ければと思います。
勉強を継続する難しさがある
試験の難易度とは軸が違うのですが、行政書士試験勉強で躓くポイントがあるとすれば、つまらなすぎて勉強するのが苦痛になるというものがあげられるかと思います。
民法は比較的楽しく勉強できるかと思うのですが、最もボリュームの多い行政法の勉強は個人的にはつまらなくて最初のころは大変でした(ちなみに勉強を続けていくと楽しくなるかと思います)。
実際に行政書士試験勉強を始めたものの、行政法がつまらなくて頭に入ってこず苦戦されている方は結構いたなと感じています。
行政書士試験の勉強をしていると試験勉強と実務が乖離しすぎていて勉強した意味が感じられないなどの書き込みをネットで見る機会も多くなってくるので、行政法の勉強をする意味とかいろいろ考えてしまい、勉強継続のモチベーションダウンなども頻発し、難しいと言えるかと思います。
私の場合は判例や事件などを見るのが好きで、それらを学んでいるうちに楽しくなっていったという経緯があります。
ニュースを見て行政処分だとか開示請求だとかいうのを見て内容が理解できるようになったのも徐々に楽しくなっていった要因です。最初きついかもしれませんが、乗り越えると楽しくなるポイントが出てくるので頑張っていただきたいです。
なお、行政書士として独立するなら行政法はしっかり勉強しておいて損は無いです。というか必須です。確かに試験勉強で求められる知識と実務が乖離しているのは事実であり、試験勉強が仕事で役立つかと言えば、判断は難しいです。。。と言わざるを得ないのですが、最低限必要な知識であるともいえるので、きちんと勉強して理解してください。
行政書士試験の合格率は10%前後と難関資格の中では高い方だが他資格の合格率との比較に意味はない
行政書士試験の合格率が高いことも難易度が低く見られがちな要因の一つと言えるでしょう。
合格率が10%を超えることが大半です。
ただ、行政書士試験受験者の中には司法書士受験生や予備試験受験生も多くいるので、こうした方々が合格率を高めていると考えると、純粋に行政書士試験合格を狙っている方々の合格率はもう少し低いと思います。
また、わざわざ行政書士試験を受けようという方々は比較的モチベーション高くしっかりと勉強して受験日を迎えている方が多いため、受験生の母集団のレベル(仕上がり度合い)は簿記検定などと比べれば高いと言え、そうした中で10%という合格率であることを考えると低い合格率と言えるでしょう。ちなみに、簿記2級の合格率が20%台、30%台です。簡単な試験ではありませんが、一方で申込したものの全く勉強してなくて記念受験される方も多く、そうした方々がかなり合格率を下げていることは間違いないです。
また、参考までに超難関である税理士試験の各科目の合格率が10%~20%ありますが、簡単な試験だと思いますか?何年もモチベーションを保って勉強し続けている方々の合格率がこのぐらいである試験ということを考えると難しい試験であると言えます。
なので一概に合格率だけで判断しないようにした方が良いでしょう。
こうした視点で見ると、行政書士試験は難易度は比較的高いと考えて臨んだ方が良いでしょう。
昔の行政書士試験は簡単だったらしい
大昔の行政書士試験は本当にものすごく簡単だったらしいです(聞いた話ですので詳細はわからないのですが)。
そのため、現在の70代以上の方々などは行政書士試験と聞くと簡単な試験というイメージをお持ちの方もいらっしゃるようでした。
そうした時代の流れというのもあり、生きてきた時代背景によって行政書士試験の難易度の捉え方が異なるのだなと思いました。
ただ、今現在という視点で考えると個人的には難しい試験に該当するものだと感じます。
結論:行政書士試験の難易度はやや高い。ただ、しっかり勉強すればだれでも合格が可能なレベル
行政書士試験の難易度についてさまざまな角度で説明してきましたが、結論としては、難易度はやや高いという表現になるかなと思います。
公認会計士や税理士、司法書士など、その他の難関国家資格よりは簡単であること、法律系資格の中では入門的な位置づけであること、試験問題の傾向からして基礎論点を取り扱うものが多いことからしっかりと勉強さえすれば合格できる試験であることを考慮すると、誰でも十分合格できる難易度であり、誰でも受かる試験であると言えます。
試験範囲が広いことや勉強をし続ける難しさを考慮すると、簡単な試験ではないが、そこまで難しいわけでもないという、微妙な難易度だと思います。
そのため、やや難易度は高いという表現になるかと思います。
働きながらでもしっかり計画的に勉強すれば合格できますが、途中であきらめてしまう方も少なくありません。これから勉強を開始される方はしっかりと情報収集の上取り組むようにしてください。
私が行政書士試験に合格した体験(スタディングだけで行政書士試験に合格した私がおすすめポイントと行政書士試験に合格するためのコツを紹介!)なども記載しているのでご参考頂ければと思います。