ホームページ制作における業務委託契約書の作成のご相談は多い傾向にあります。
私自身もフリーランスのWeb制作をしていたので、悩む気持ちもわかります。
HP制作の最近の傾向としては、Wordpress(以下、ワードプレス。)で構築するケースがかなり多くなっています。
自分でオリジナルのテーマを作るケースでばかりでなく、既存テーマ(第三者が作った既存テンプレート)をカスタマイズする形でのWebサイトの構築も増えております。
スクラッチで制作する場合や自分でオリジナルテーマを作成するケースと異なり、第三者の権利(著作権等)にも配慮する必要があるため、契約書の作成においては一定の注意が必要な場合があります。
そうした諸々のケースを考慮したホームページ制作における業務委託契約書作成のポイントを解説していきます。
なお、アロー行政書士事務所ではホームページ制作関連の業務委託契約書の作成代行を行っております。
私自身もフリーランスや事業主としてHP制作やWebマーケティング支援等を行っていたので、こうしたサービスを提供する事業主様のサポートは比較的得意とするところです。過去の経験からのサポートが可能です。
契約書の作成等でお困りであればぜひご相談ください。契約書作成代行サービス詳細はこちらからご確認いただけます。
※ひな形の配布もしておりますが、ワードプレスによるHP制作の契約書ひな形は有料での提供となります。ご了承ください。通常の業務委託契約書のひな形は無料ダウンロードがございます。
ワードプレスによるWeb制作で業務委託契約書が必要な理由
HP制作は報酬の受領や納品のタイミングをめぐってトラブルが起きやすいため、契約書を作成しておく必要があると考えます。
よくあるトラブル
ワードプレスを使ったホームページ制作では、以下のようなトラブルが発生しやすくなります。
① 報酬の未払い・支払い遅延
- 納品後に「やっぱり思っていたものと違う」と言われて報酬が支払われない
- 「追加修正分の費用は払いたくない」と言われる
② 納品後の無限修正
- 「ここも修正してほしい」「ちょっとした変更だから無料でできるよね?」と、納品後も延々と修正依頼が続く
- 「デザインの一部を変更してほしい」と言われ、想定以上の作業が発生する
③ 著作権・知的財産権のトラブル
- 「制作したデザインを他のクライアントに使わないでほしい」と言われる(テンプレ利用なので難しい部分がある)
- テンプレートやプラグインのライセンスを勝手に利用されるなどクライアント側の不義理が意外と多い
④ 仕様変更による作業増加
- 「やっぱりブログ機能を追加したい」「EC機能も入れてほしい」など、契約時になかった要望を追加される(当初の見積り内でやれと言われる)
- 追加作業の見積もりを出すと「最初の契約に含まれているはず」と言われる
【契約書を作成するメリット】
ワードプレスのHP制作を業務委託契約で進める場合、契約書を作成しておくことで以下のようなメリットがあります。
- 報酬の支払いを明確化できる(着手金・納品後の支払いルールを明記)
- 修正対応の範囲を制限できる(無料修正回数・追加費用のルールを設定)
- 著作権やデータの扱いを事前に決められる(誰がどの権利を持つのか契約で明確にする)
- 追加作業の費用を請求しやすくなる(契約外の作業には別途見積もりを提示)
- 契約解除時のルールを設定できる(途中解約時の違約金や精算ルールを定める)
このように、契約書を作成しておくことで、お互いに納得のいく形で取引を進められ、トラブルを未然に防ぐことができます。
次に、ワードプレスを使ったHP制作業務委託契約書に必須の項目について詳しく解説します。
ワードプレスによるホームページ制作の業務委託契約書で注意すべき条項
上記を踏まえ、ワードプレスを使ったHP制作の契約書では、以下の6つのポイントを必ず明記する必要があります。これらを明確にしておかないと、トラブルの原因になりやすくなります。
業務内容・範囲を明確にする
ホームページ制作と一口にいっても、作るところまでなのか、日々の保守管理もやる必要があるのか、HPで集客ができるようになるところまで支援をするのかなど、何をどこまでやるかが案件ごとで異なってきます。
特に、ワードプレスでのHP制作では「デザイン」「機能実装」「プラグイン設定」「保守管理」などの作業範囲がクライアントと認識違いを起こしやすいため、以下のような点を具体的に定めておきましょう。
※以下はあくまで一例です。
含まれる作業
- ワードプレスの基本設定
- テーマのインストール・設定
- 固定ページ(トップ・サービス・お問い合わせ等)の作成
- プラグインの導入
含まれない作業(別途費用が発生する作業)
- オリジナルデザイン(テンプレート)の作成(テンプレートが持つ機能を超えるカスタマイズ)
- プラグインの開発・カスタマイズ
- SEO対策やマーケティング施策
- バックアップを含む保守管理
保守管理まで受ける場合は、保守管理に関しても何をどこまで対応するのか定めておいてください。
なお、この業務内容・業務範囲は別紙に記載するとしておくことで、契約書の内容をシンプルにし、使いまわしがしやすい形にすることも可能です。
別紙(仕様書)を作成することで、契約内容の変更があった際に契約書を修正せずに別紙だけを更新できる、「契約範囲外の作業」を明確にし、追加料金を請求しやすくなる、トラブル時に「契約に含まれているかどうか」を判断しやすくなります。
納品と検収について
納品の定義を明確にしておくと安心でしょう。
「サーバーにアップロードした時点で納品とする」
「テスト環境で動作確認が完了した時点で納品とする」
等。
また、修正対応の回数を制限することも重要です。
「デザインの修正は3回まで無料、それ以降、正当な理由がなく修正依頼をする場合は1回につき追加費用が発生」
等。
検収期間を設けることも重要です。いつまで経っても納品が完了しないというケースは一程度ございます。
「納品後2週間以内に問題点を指摘しなかった場合、正式に受領されたものとみなす」
等。
表現はあくまで一例ですが、どこまでやったら納品になるのか、クライアント側との認識をすり合わせる意味でも必ず定めておきたい事項です。
特にデザインに関しては、単なる「好み」や「好き嫌い」の問題で何度も修正を入れてくる方が結構いらっしゃるため注意したいところです。
著作権と知的財産権の取り扱い
ワードプレスの場合、そもそも第三者のサイトを制作するのに活用してはいけないテーマもあるため、契約書以前にそのあたりを確認の上利用するようにしてください。第三者向けに開発がOKなテンプレートであると仮定した場合、制作物に関して、誰が制作したサイトの権利を持つのかを記載しておくことも重要です。
また、オリジナルテーマの開発で合っても、プラグインを使用するケースはあるかと思いますので、プラグインの権利についても注意したいところです。加えて、こうした第三者が開発したソフトウェアを使用することを相手方が許諾することも記載しておくべきかと思います。
一般的なHP制作の業務委託契約書のひな形だとこの辺りは記載していないので、一程度の注意は必要かなと思います。
支払い条件
HP制作関連で最も多いトラブルの一つが報酬の未払い、報酬額の認識の相違などです。
未払いトラブルを防ぐために、支払いのルールを厳格に定めることが必要です。
支払いスケジュールの明記
「契約締結時に着手金(契約金額の50%)を支払い、納品後に残額を支払う」などのように、着手金を得ておくことで、完全なとりっぱぐれは防げます。
納期の項目でも記載しましたが、何がどうなったら納品なのか共通の認識を持ち、納品から何日以内に振込みなのかなども定めておきましょう。
保守管理業務の有無と範囲
ホームページ納品後も「保守管理が必要かどうか」を契約で決めておく必要があります。
契約書に明記すべき点としては、
- 納品後のサポートは含まれるのか?(軽微な修正対応・バグ修正など)
- 継続的な保守契約があるか?(月額契約で対応する場合)
- サーバー・ドメイン管理は誰が行うのか?
- 保守管理を行う場合、具体的に何を何回するところまでが基本料金に含まれるのか
などとなります。
トラブル例として、「納品後1年経ってから『動かなくなったから無料で直して』と言われることがあります。」
仮に保守管理契約がなかったとしても、軽微な修正には納品後も対応するケースはあるかと思いますが、契約書で「納品後の無償サポート期間は○日間」と明記するなど、リスクヘッジはしておきましょう。
契約解除について
デザインが気に入らないということも含めて、意外と泥沼になりがちなのがHP制作案件です。
そうなった際に、解除というケースもあるのですが、契約が途中でキャンセルになった場合、報酬はどのようにするのか決めておく必要があります。
- 着手後のキャンセル:契約金額の50%を請求(着手金はもらう)
- デザイン完成後のキャンセル:契約金額の80%を請求
- 納品直前のキャンセル:契約金額の100%を請求
HP制作は未払い、未納品(納品させてくれない)リスクが結構高い業務なので、こちらに落ち度がない場合はしっかり費用が一程度は取れるような内容にしておくことをおすすめします。
その他の項目
HP制作に限りませんが、損害賠償責任、秘密保持、不可抗力、反社条項あたりは必ず入れるようにしてください。
ワードプレスHP制作の業務委託契約書には、以下の6つのポイントを意識してみましょう。
- 業務範囲の明確化(どこまでが契約に含まれるか)
- 納品と検収のルール(修正回数・検収期間)
- 著作権と知的財産権の取り扱い(テンプレート・プラグインの権利関係)
- 支払い条件(着手金・分割払い・遅延損害金)
- 保守・管理業務の有無(納品後の対応をどうするか)
- 契約解除の条件(途中キャンセル時の費用)
- 反社条項や不可抗力条項など一般的に必要なものも忘れずに入れ込んでください。
次は「ワードプレスのテンプレート・テーマを利用する際の契約の注意点」を詳しく解説します!
ワードプレスの「テンプレート・テーマ」を利用する際の契約書の注意点
途中で何度か記載しましたが、ワードプレスのHP制作では、既存のテンプレートやテーマを活用することも多くありますが、これらを使用する際に契約書で注意すべきポイントがあります。特に、著作権・ライセンス・カスタマイズ範囲のトラブルを防ぐために、契約内容を明確にすることが重要です。
テンプレート・テーマの著作権はどうなる?
ワードプレスのテーマには、「無料テーマ」と「有料テーマ(プレミアムテーマ)」があり、それぞれのライセンス規約が異なります。
著作権の基本ルール(あくまで傾向の話です)
- ワードプレス本体 → オープンソース(GPLライセンス)
- 無料テーマ → ほとんどがGPLライセンス(自由にカスタマイズ可能)
- 有料テーマ → 開発者のライセンス規約に従う必要がある場合がある(カスタマイズ制限・再配布禁止の可能性あり)
一般的に、納品物の著作権は発注者側に納品と同時に移転されますが、Wordpressの著作権やその他のライセンスに関してどうなるのかは別途記載しておくべきでしょう。WordPressはGPLライセンスだが、制作物(デザイン・カスタム部分)の権利はクライアントに移転など、明記しておいた方がよろしいかと思います。
テンプレートを使わず、自分でテーマを開発する場合もあるかと思いますので、用途によって記載を変更してください。
契約書以前にテーマのライセンス条件・使用制限を確認しておく
有料テーマ(例:TCDテーマ、DIVI、Snow Monkeyなど)には、それぞれ使用制限やライセンス条件が設定されていることが多いです。
ライセンスチェックのポイント
- クライアントごとに購入が必要か?(1ライセンスで複数サイト使用可能か?)
- テーマのカスタマイズ制限はあるか?(コード改変OKか?)
- ライセンス違反するとどうなるか?(法的リスクは?)
契約書に記載すべき条項
「本制作に使用する有料テーマのライセンスは、発注者自身が購入するものとし、ライセンス条件の遵守については発注者が責任を負うものとする」
トラブル例
「制作会社が購入した有料テーマを複数のクライアントに使い回していたため、ライセンス違反で訴えられた」
制作会社向けの利用を許可していない有料テーマを使いたいという希望がある場合は、クライアントにテーマを購入してもらうのが安全です。
このあたりはテーマの開発元などに確認して利用するようにしてください。
クライアントにテーマを購入してもらう場合の契約の書き方
有料テーマを使用する場合は、制作者がライセンスを購入するのか、クライアントに購入してもらうのかを契約で明記しておくべきです。
契約書に記載すべきポイント
- テーマの購入者は誰か?(制作者 or クライアント)
- 購入費用は誰が負担するか?
- ライセンス契約の責任はどちらが負うのか?
契約書の記載例(クライアント購入の場合)
「本制作において使用する有料テーマ(〇〇テーマ)は、発注者自身が購入するものとし、、、、とする。」
契約書の記載例(制作者購入の場合)
「本制作において使用する有料テーマ(〇〇テーマ)の購入は制作者が行うものとし、そのライセンスは本契約に基づく本件制作物のみに適用される。発注者は、ライセンスの範囲を超えて本テーマを利用することを禁止する。」
トラブル例
「制作者が購入して使用を許諾されている有料テーマをクライアントが別のサイトで勝手に使ってしまい、ライセンス違反になった」というケースがあります。
契約書で「使用範囲の制限」をしっかり記載し、そもそも使いまわしてはいけないことを記載しておきましょう。
自分が買ったテーマではないものを使いまわすのは常識的に考えてダメだろうとわかりそうなものですが、そういったことが通じない相手は結構多くいます。ご注意ください。
ワードプレスのテーマ・テンプレートを利用する際の契約書の注意点をまとめておきます。
- テンプレート・テーマの著作権を明記する(誰が権利を持つか?)
- 有料テーマのライセンス条項を確認する(クライアント購入が安全)
- テーマの購入・ライセンス管理の責任を明確にする(契約で決める)
フリーランスのWeb制作者の業務委託契約書で気を付けること
フリーランス新法に伴い、ついで的な感じでの付け足しになってしまいますが、発注側も受注側も契約書の作成はもとより、業務実態という意味でも注意が必要です。
主なポイントは以下のとおりです:
- 取引条件の明示義務: 発注者は、フリーランスに業務を委託する際、取引条件を明示する義務があります(支払い60日以内等)。
- 禁止行為の規定: 報酬の不当な減額や返品の強要など、フリーランスに不利益をもたらす行為が禁止されています。
- 就業環境の整備: ハラスメント防止措置や育児・介護への配慮など、フリーランスの就業環境の整備が求められています。
この法律の施行に伴い、フリーランスと取引を行う事業者は、契約書の内容を見直し、法律に適合した取引条件を設定することが求められます。特に、業務委託契約書においては、報酬の支払い条件や業務範囲の明確化、契約解除の条件などを明記し、双方が納得の上で契約を締結することが重要です。
また、フリーランス自身も、自らの権利を守るために、契約書の内容を十分に理解し、不明な点や不利な条件がないかを確認することが重要です。必要に応じて、専門家に相談することをお勧めします。
このように、フリーランス新法の施行により、フリーランスと事業者の双方が適切な取引関係を構築することが求められています。契約書の作成や見直しを通じて、法令遵守とトラブル防止に努めましょう。
フリーランス新法に関しては、以下の記事でも解説しております。
ワードプレスでHP制作する場合の業務委託契約書はアロー行政書士事務所にご相談ください
アロー行政書士事務所では、HP制作・Web制作関連の業務委託契約書の作成を得意としております。
私自身がそうした仕事をしており、契約書も多数つくってきたからです。
行政書士に契約書を依頼する方の大半が、フリーランスあるいは従業員100名未満の中小企業であるケースが多くなっており、それほど契約法務に費用はかけられないというケースも多いことから、料金も比較的リーズナブルな価格帯で提供しております。
この機会にぜひご相談いただければと思います。
業務委託契約書作成代行サービス詳細はこちらからご覧いただけます。
お問い合わせは以下ボタンよりお願いします。
ひな形の提供について
本ページ記載の内容のひな形については、有償での提供となっております。
オリジナルの契約書作成ではなく、ひな形のみ欲しいという場合もお問い合わせください。現状、ダウンロード販売を停止しております。ご了承ください。
ひな形のみの販売は税込1万1千円となります。オリジナル契約書は15,400円~となります。