フリーランス新法について解説!契約書作成などで注意点も

2024年(令和6年)11月よりフリーランス新法が施⾏されました。

フリーランス新法に対応した契約書に関する問い合わせが一定数あることから、このページでは、簡単にフリーランス新法について解説します。

なお、アロー行政書士事務所では業務委託契約書等の作成業務を行っております。

ドローン講師業務委託契約書やデザイン業務委託、HP制作業務委託契約書、Youtuber・VTuberマネジメント契約・出張シェフなどフリーランスが多い業種における契約書の質問は多くなっております。お困りであればご相談ください。複雑ではない契約書の場合、1万2千円(税別)から対応が可能です。複雑な契約の場合は別途相談の上、お見積りさせていただきます。

発注企業側、フリーランス側どちらからの依頼にも対応しておりますので、それぞれの立場ごとでの作成をさせていただきます。

※このページは専門家向けではなく、一般事業者様向けの内容なため、あえて簡易的な表現をしている箇所がありますがご了承ください。
※フリーランス新法とは、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)が正式な名称となりますが、わかりにくいため、このページではフリーランス新法と記載していきます。
※フリーランス新法に伴う労務や法律相談、組織体制等に関するコンサルティングは行っておりません。
※厚生労働省特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)についてを参考文献としています。

フリーランス新法で対象となる業務委託取引とは?

フリーランス新法はどういった業務委託取引の際に適用されるのでしょうか?

この新法では、「従業員を使用しない1人の個人として業務委託を受ける事業者(特定受託事業者)」と「従業員を使用する組織として業務委託をする事業者(特定業務委託事業者)」との業務委託取引で適用されます。

事業者間の取引なので個人消費者からの委託は対象外

この新法の対象となる業務委託とは、BtoBにおける業務委託取引が対象となります。

事業者ではない一般の個人消費者から何か委託を受けた場合、このフリーランス新法の対象では基本的にありません。また、業務委託と言いつつも、実質的に雇用関係にあるという場合は労働法が対象となるケースもあるでしょう。

個人事業主だけでなく法人であってもフリーランス(特定受託事業者)に該当することもある

フリーランスというと個人事業主を思い浮かべますが、ここでいうフリーランス(特定受託事業者)は、単なる個人事業主だけでなく、社長1人だけ(他に役員も従業員もいない)という法人も該当するケースがあります。

最近は1人社長の企業も増えているため、委託する側も注意が必要です。

フリーランス同士の取引には適用されない(取引条件の明示以外)

従業員を使用しない1人の個人(1人会社含)として業務委託を受ける事業者(特定受託事業者)と組織として業務委託をする事業者(特定業務委託事業者)との取引が対象なので、お互い1人しかいない会社の社長同士の取引など、特定受託事業者間の取引にあたってはこの新法は適用されません(取引条件の明示は除く)。

かなりザックリとした書き方になりますが、発注者は大きな組織で立場が強い傾向にあり、フリーランスは立場が弱い傾向にあることから、パワーバランスが崩れやすかったこともあり、ハラスメント等が起きやすい状況でもありました。フリーランス新法ではルールを整備することで、こうしたバランスの悪さを解消し、適切な取引ができるような状況を目指していることとなります。

従業員を使用しているとは?

従業員を「使用している」とは、所定労働時間が20時間以上(週)であり、且つ、31日以上の雇用の見込みがあることを指します。

なので、週18時間労働の方を3カ月雇用見込みであったとしても、ここでいう従業員には該当しないこととなります。

どこかに従業員として雇用されている副業の個人は新法の対象?

どこかの企業に従業員として正式に雇用されている個人が副業で事業を行っている場合において、その個人が雇用されている企業ではない他の事業者から事業者として業務委託を受けるケースでは、特定受託事業者に該当します。つまり、フリーランス新法におけるフリーランスに該当します。

フリーランス新法の規制内容について

フリーランスと企業間とではこれまで数多くのトラブルがありました。契約条件があいまいで支払い金額が適切ではないケースや突然の契約解除、ハラスメントなどが代表例です。人材を使い捨てるようなケースもあったようです。

そこで、フリーランス新法では、働く環境の整備(パワハラや育児介護対策)労働条件の適正化の2つの観点から指針が定められています。

働く環境の整備(パワハラや介護育児への配慮)

新法では、①募集情報の適正表示、②育児介護への配慮、③ハラスメントへの防止対策、④契約解除の制限(事前予告・理由開示等)が示されています。

ハラスメント行為に対する窓口の設置とその周知など、発注企業側に求められるものは増えています。

また、相場と比較して著しく報酬額を低く設定する行為などは問題となります。

フリーランス側のメリットとしては、簡単に言うと、フリーランスが安心して働けるように環境整備を行ったということとなります。

①募集情報の適正表示について

フリーランス新法12条の内容となります。

フリーランスを募集広告する際など、その情報について、

・虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならない
・正確かつ最新の内容を保たなければならない

と記載されています。

クラウドソーシング等の募集でも同様です。

具体的に何が的確表示義務かというと、

  • 業務内容
  • 業務に従事する場所・期間・時間
  • 報酬
  • 契約の解除、不更新に関する事項
  • 特定受託事業者の募集を行う者に関する事項

となります。

多く募集するために、支払うつもりのない報酬金額で釣る行為(誤解させる行為含む)や募集が終わっているのに掲載し続ける行為等となります。

②育児介護への配慮

フリーランス新法13条の内容となります。

育児・介護への配慮義務があります。

発注者(特定業務委託事業者)は、政令で定める期間以上(6カ月以上)の継続的な業務委託がある場合において、フリーランス側から申し出があった場合に関しては、育児や介護と業務が両立できるように、納期を調整したり、リモートでの勤務ができるように必要な配慮をしなければなりません。

特定業務委託事業者は、申し出があった場合は、配慮の内容を検討し、実施しなければならないが、やむを得ず実施できない場合は、フリーランスに対し、実施できない理由を説明する必要があります。

申し出を阻害すること、申し出を受けたことを理由に契約解除等することは、望ましくない取扱いに該当し、労働局による調査等が行われる可能性があるため注意が必要です。

なお、6カ月未満の業務については、両立できるように努めなければならないとされています。

③ハラスメントへの防止対策(体制整備義務)

ハラスメント対策に係る体制整備義務があります。

  • ハラスメントを行ってはならないことの方針等の明確化と社内への周知の徹底が必要です
  • 相談窓口を設置するなど、適切な対応ができる体制の整備が求められます
  • ハラスメントの事実関係が認められた場合の事後の対応が求められます

フリーランスへの報復として契約解除をするなどの行為はできないことなどを指針として明示するなどが必要です。

④契約解除の制限(事前予告・理由開示等)

契約の中途解除等の事前予告・理由開示義務があります。

発注者側は、継続的業務委託(6カ月以上)を中途解除するようなケースにおいては、原則解除日の30日前までにフリーランス側に事前予告しなければならないとされています(災害等やむを得ない事由やフリーランス側の責めに帰すべき事由がある場合など例外事由有り)。また、理由の開示が求められた場合は、発注者側は理由を開示しなければなりません。

労働条件の適正化

新法では、①書面等による取引条件の明示、②報酬の支払いに関する適正化(支払い期日の設定等)、③1ヵ月以上の取引(継続取引)における禁止行為が定められています。

今まで解約書等で曖昧、あるいは発注側に都合のいいように記載していた箇所等は見直しの必要がある場合が多いかと思います。

なお、取引条件の明示に関しては、フリーランス同士の契約でも必須となりますのでご注意ください。

①書面等による取引条件の明示

発注企業は、フリーランスに対し、業務委託の報酬額、支払期日、委託内容等を書面又はメール等の電磁的記録により明示しなければなりません。

以下は明示する取引条件です。

  • 報酬額
  • 支払い期日
  • 業務内容
  • 発注事業者・フリーランスの名称等
  • 業務委託をした日(仕事をした日ではありません)
  • 給付を受領し、又は役務の提供を受ける日
  • 給付を受領し、又は役務の提供を受ける場所
  • 検査完了日(検査をする場合)
  • 現金以外の方法で報酬を支払う場合の支払い方法に関する明示事項

なお、取引の性質上、発注時点でその内容を決定することができないと客観的に認められる理由がある場合は明示する必要はありませんが、未定事項の内容が決まった後、書面やメール等の電磁的方法により明示しなければなりません。

②報酬の支払いに関する適正化(支払い期日の設定等)

発注側企業は、フリーランスに対し、納品を受けた日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、報酬の支払期日を定めてそれまでに支払わなければならないとされています。

支払期日を定めなかった場合は、次のようになります。

・物品等を実際に受領した日(支払い期日を定めなかったとき)
・受領した日から起算して60日を経過した日の前日(60日を超えて定めたとき)

③1ヵ月以上の取引(継続取引)における禁止行為

フリーランスと継続的な業務委託(1ヵ月以上)の場合については、以下の5項目について法律上禁止されています。

  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  • 著しく低い報酬額を不当に定めること
  • 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

また、以下の2項目の行為によって、フリーランスの利益を不当に害してはならないとされています。

  • 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、またはやり直させること

ここまでで記載した内容に関して、表にして簡単にまとめてみました。

■フリーランス新法ここまでの簡易まとめ

フリーランス新法名称特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律
目的フリーランスと発注事業者との間のトラブルを防ぎ、安心してフリーランスが働けるように環境を整備する。
新たな規制・義務(発注事業者側)・業務委託の報酬額や内容等の取引条件を契約書や発注書、電子メール等で明示しなければならない。
・報酬は納品から60日以内に支払い期日を設定し、支払わなければならない。
・募集の際は情報を正確且つ最新に保つ(募集広告についての規制)
・育児や介護等への配慮
・ハラスメント対策措置
・契約の解除に関する規制(30日前までの事前予告等)

※命令違反には50万円以下の罰金等もあります。

フリーランス新法に伴い発注者側が注意すべきこと

発注者側は特に注意が必要であると言えるでしょう。

  • 契約書や発注書等の取引条件の明示に関する項目の見直し
  • 取引条件そのものの見直し(報酬額や支払い日等)
  • フリーランスとやり取りをする従業員への教育
  • ハラスメント対策における体制整備
  • いま現在取引しているフリーランスへの対応と確認(偽装フリーランス等)

発注者、フリーランス双方が契約内容を見直す良い機会になる場合もあるかと思います。

フリーランス側、発注者側双方から契約書の見直しがある

発注者側もフリーランス側も双方から契約書の作成依頼があります。

それだけ注目度が高いのだと考えられます。

フリーランス新法に伴った契約書の作成や見直しでお困りであればご相談ください

発注者側事業者様もフリーランスの側も、契約書の作成に関しては需要が高まっています。

この機会に見直したいというケースもあるため、契約書の作成でお困りでしたらお知らせください。

フリーランスの業務委託契約の場合、比較的単純な契約内容が多いことから、契約書作成費用としては、1万2千円~3万円(税別)以内に収まるケースが多くなっています。

納品形態はWordファイルとなりますので、納品後編集いただいても構いません。

お見積りいたしますので気軽にご連絡いただければと思います。

執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や建設業許可申請、産業廃棄物収集運搬業等の許可申請や契約書作成、内容証明作成等を行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。写真撮影に凝っていた時期がありドローンもその一環でよく飛ばしていました。
ご依頼・ご相談などはお問い合わせよりご連絡ください。
所属:日本行政書士会連合会、東京都行政書士会
行政書士登録番号:24080257