ドローンのイベント上空での飛行許可申請は大変?花火大会やお祭りなどの多数の者が集合する催し場所上空の許可申請について

ドローンにおけるイベント上空(多数の者が集合する催し場所上空)での飛行の代表例としては、夏であれば花火大会や盆踊り祭り、後はドローンショーなどがあげられるでしょう。

そんなイベント上空での飛行に関する相談は、飛行許可申請の中でも難易度は高めです。というのも、イベントは夜に行われるものも多いため、夜間の目視外飛行や高高度の飛行申請も絡み、複雑になることが多いからです。

イベント上空で飛行させようとすると制限が多いため、実際にはイベント上空には該当しないようにするなどし、イベント上空としての飛行許可申請をしない場合も多いです。夜間の目視外飛行の個別申請で済む(済ませる)ケースも多くあります。

イベント上空に該当するかどうか、その判断が難しい他、夜間の目視外飛行における体制などを含め、飛行マニュアルの作成に手間がかかる申請になるケースが多いことから、比較的難易度の高い申請です。

ここでは、そんなイベント上空でのドローンの飛行許可申請について見ていきたいと思います。

イベント上空とは?許可申請の必要性をまずは判断する

そもそもドローンにおけるイベント上空での飛行とはどういったものがあるでしょうか?

夏であれば花火大会がわかりやすい例でしょう。最近は花火風のドローンショーも多くなっていますが、ドローンショーもイベント飛行の一例です。

■イベント上空の飛行に該当する例

祭礼、縁日、展示会のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート等のイベント、ドローンショー(自社敷地内、無人の競技場内等、第三者の立入管理措置が行われていることが明白である場所での事前練習や企業向けの配信用撮影等を除く)、花火大会、盆踊り大会、マラソン、街頭パレード、選挙等における屋外演説会、デモ(示威行為) 等

■イベント上空に該当しない例

関係関与者のみが参加する催し場所上空や自然発生的な人混み(信号待ち、単なる混雑等)はイベントに該当しない。

※参考資料:無人航空機に係る規制の運用における解釈について

主催者がイベントではないと思っていてもイベントに該当してしまうケースはある

上記はあくまでも例です。イベント上空での飛行に該当するかどうかは、主催者の意図等も勘案し、総合的に判断されることとなります。微妙な場合は勝手な判断をしない方がいいでしょう。

また、当初イベントとして行う予定はなかったものの、〇月△日□時にドローンを飛ばします!などの告知をSNS等してしまった結果、その日時に人が集まってきてしまうということがあります。こうしたケースではイベントに該当する恐れがあります。イベント上空での飛行の許可申請をしないまま飛ばして罰則を受ける、あるいは当日飛行ができないという事態になることも想定されます。

日時が特定され、それを見た人が集まってくるのであれば、それはやはりイベントに該当する可能性が高いため、何かを主催するのであればその集まりの運用にも注意が必要です。

イベント上空に該当するなら場所・日時を特定した個別申請を行う

イベント上空のドローン飛行許可承認手続きは、場所(経路)はもちろんですが、日時まで特定した個別申請を行います。

また、申請すれば何でも許可が出るわけではなく、関係機関との調整、追加基準への適合、夜間の目視外飛行など、内容に合わせた飛行マニュアルの書き換え(標準マニュアル01を書き換え)が必要です。

イベント上空における飛行許可申請においては追加基準に適合させる必要がある

昔はイベント上空も包括申請ができたのですが、いろいろな事件・事故があり、現在は個別申請が必要です。しかもイベント飛行の場合、夜間の目視外飛行や高高度飛行など、いろいろ絡むことも多いので結構申請は大変です。

ただ、まずはイベント上空に係る場合における許可申請における追加基準への適合について見ていきましょう。

第三者の上空を飛行させないケース

基本的に第三者上空の飛行は行わない前提での申請となります。

第三者に対する危害の防止

特定飛行の場合、第三者上空の飛行は基本的にできません。イベント上空の場合も当然第三者の上空を飛行させない体制を作ることが前提です。ただ、万が一の墜落等にも備える必要があります。墜落したときのリスクは特に高い場所なので、しっかりとした体制が求められます。具体的には、以下に適合させる必要があります。

  • 第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。
    • プロペラガードの装備や衝突した際の衝撃を緩和する素材等の使用
  • 想定される運用により、10回以上の離陸および着陸を含む3時間以上の飛行実績があること

無人航空機を飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること

これは読んで字のごとくの要件となります。

安全を確保するために必要な体制について、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること

第三者の上空で飛行させないような体制を作る必要があります。

  • 飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
  • 飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと
  • 飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。
  • 催しの主催者等とあらかじめ調整を行い、次表に示す立入禁止区画を設定すること
    • 飛行高度20m未満:飛行範囲の外周から30m以内の範囲の立入禁止区画
    • 飛行高度20m以上50m未満:飛行範囲の外周から40m以内の範囲の立入禁止区画
    • 飛行高度50m以上100m未満:飛行範囲の外周から60m以内の範囲の立入禁止区画
    • 飛行高度100m以上150m未満:飛行範囲の外周から70m以内の範囲の立入禁止区画
    • 飛行高度150m以上:飛行範囲の外周から落下距離(当該距離が70m未満の場合にあっては、70mとする。)以内の範囲
  • 風速5m/s以上の場合には、飛行を行わないこと
  • 飛行速度と風速の和が7m/s以上となる場合には、飛行を行わないこと

適用除外や注意事項

係留装置で飛行させる場合も多くなっていますが、その場合、立入禁止区画の考え方が変わり、上記に記載した範囲を指定しなくても飛行させられます。ただし、係留装置も万能ではなく、飛行が制限されることから注意は必要です。このほか、メーカー側が落下距離に関する資料を提示して保証している場合においては、禁止区画の設定も必ずしも上記に記載するものでないとダメなわけではありません。

なお、150m以上の上空においては、落下距離計算が必要ですが、現状DJI機だと公開されておらずそれができないため(今後情報が公開される可能性はあります)、機体が限定されます。

いずれにせよ、こうした条件を満たすあるいはそれに代えて何かで実現できるのであれば、緩和の余地がある項目もあります。

第三者上空を飛行させる場合(やむを得ず)

やむを得ず最大離陸重量25kg未満のドローンで第三者上空を飛行させる場合、以下の基準に適合する必要があります。

機体に関して以下の基準に該当すること

  • 飛行を継続するための高い信頼性のある設計及び飛行の継続が困難となった場合に機体が直ちに落下することのない安全機能を有する設計がなされていること。以下はその一例。
    • バッテリーが並列化されていること、自動的な切り替え可能な予備バッテリーを装備すること又は地上の安定電源から有線で電力供給されていること。
    • GPS等の受信が機能しなくなった際に、その機能が復帰するまで空中における位置を保持する機能、安全な自動着陸を可能とする機能又はGPS等以外により位置情報を取得できる機能を有すること。
    • 不測の事態が発生した際に、機体が直ちに落下することがないよう、安定した飛行に必要な最低限の数より多くのプロペラ及びモーターを有すること、パラシュートを展開する機能を有すること又は機体が十分な浮力を有する気嚢等を有すること。
  • 飛行させようとする空域を限定させる機能を有すること。以下はその一例。
    • 飛行範囲を制限する機能(ジオ・フェンス機能)
    • 飛行範囲を制限する係留装置を有していること
  • 第三者及び物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。以下はその一例。
    • プロペラガード

ドローンの操縦者についての追加適合基準

  • 意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができる。
  • 飛行の継続が困難になるなど、不測の事態が発生した際に、無人航空機を安全に着陸させるための対処方法に関する知識を有し、適切に対応できること。
  • 最近の飛行の経験として、使用する機体について、飛行を行おうとする日からさかのぼって 90 日までの間に、1時間以上の飛行を行った経験を有すること。

安全を確保するために必要な体制について

  • 経路等を事前に確認し、できるかぎり第三者の上空を飛行させないような経路を特定すること。
  • 飛行経路全体を見渡せる位置にドローンの飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者はドローンを飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
  • 上空で無人航空機が飛行していることを第三者に注意喚起する補助者を配置すること。
  • 不測の事態が発生した際に、第三者の避難誘導等を行うことができる補助者を適切に配置すること。
  • 催しの主催者等とあらかじめ調整を行い、観客、機材等から適切な距離を保って飛行させること。

このほか、25kg以上のドローンの飛行の場合などの審査要件などもありますが、ここでは割愛します。

基本的に最初に記載した第三者の上空を飛行させない場合での申請を目指すこととなります。

いずれにせよ、厳しい制限がかかるため、自由に飛行させることは難しくなります。

また、申請後に、補助者の人数を含め、体制に関する指摘が入るケースが大半です。そうなってくると、関係各所との調整も求められるため、審査の期間、調整に係る期間、飛行マニュアルなどを作成する時間なども検討し、遅くとも1か月前には申請を始めたいところです。

もちろん、イベントといっても規模間はさまざまなため、そこまで大変にならないケースもあります。

もしご自身でイベント上空の飛行の申請が難しいと感じる場合はご相談いただければと思います。

特に夜間の目視外飛行も絡んでくると、飛行マニュアルを含めた体制の作成で苦戦されるケースが多い印象です。

イベント上空での飛行は、夜間の目視外飛行や高度150m、空港周辺が関連するケースも多い

何度か記載している通り、夜間の目視外飛行や高高度飛行がイベント関連の飛行だと多くなります。

それぞれ単体での個別申請でも大変ですが、関係各所との調整を経て申請をすることで、何とかなる場合が多くなっています。

ただし、空港周辺が絡むケースにおいては、空港によっては飛行が絶対できないケースもあるため、その場合は制限に係らない高さで飛行させるなど、少し妥協した飛行が必要となるケースもあります。

許可申請の流れにも注意

仮に、イベント上空での飛行、夜間の目視外飛行、150m上空、空港での飛行が関連してくるケースにおける申請についてザックリ見ていきましょう。

申請にあたっては、関係各所との調整結果を申請書に記載して申請手続きをする必要があります。これは、150mと空港の申請も同じかと思いますが、イベントの場合は、主催者や飛ばす場所に応じた機関との調整も必要でしょう。

なので、手順としては、先に関係各所との調整を行っておく必要があります。また、夜間の目視外飛行を行うにあたっては、夜間の目視外飛行に伴う体制についての記述が必要となりますので、それらを主催者と事前に検討しておく必要があります。

そのうえで、申請後に補正が出ることが多いので、さらなる調整が必要となることも主催者含めて理解してもらっておく必要があります。

①空港事務所や主催者等関係各所との調整→②空港事務所への許可申請→③航空局への許可申請という流れになります。

※調整先の例としては、主催者の他、警察や消防、空港等内容によって異なります。
※150m以上の上空、夜間に目視外飛行、更にイベント上空となると結構大変なのでご注意ください。

花火大会であればイベント上空に該当しない飛行で撮影するケースも

撮影ポイントによっては、イベント上空に該当せず飛行させることができる場合もあります。

この場合、夜間の目視外飛行に関する申請だけで済む場合があります。

イベント上空に該当する申請は手間暇がかかるため、避けられるのであれば、避けるのもポイントです。

イベントを企画する段階からドローンを視野に入れておく

イベントの企画全容が決まった後に、後付けでドローンを飛行させようとする場合においてはトラブルになるケースは多い印象です。

イベント上空の場合、飛行可能な範囲は限られていますので、思っていたようなドローンの撮影が実現できない場合があります。立入禁止区画の設定などを加味する必要があるからです。

企画段階からある程度ドローンパイロット等も交えて相談すると良いでしょう。

また、行政書士に申請を依頼するケースであれば、ある程度早い段階で行政書士にも相談しておくと良いでしょう。

申請に1か月以上かかることも多いためスケジュール管理にも注意が必要

イベント上空の飛行許可申請は包括申請とは異なり、審査も含めて時間が長くかかります。

飛行内容の複雑さにもよりますが、基本的に補正無しで行けるケースはあまりないので、スケジュール的にはかなりゆとりをもって進めることをおすすめします。

先ほど記載しましたが、イベントの企画が固まった後に急遽ドローンを組みこもうとするケースでは、イベントの1週間前とか2週間前くらいにドローンを飛行させたい、といったことを急におっしゃるケースがあります。

この場合、許可申請が間に合わないと考えられるため、スケジュール管理にはご注意ください。

その他の規制にも注意

ここまでは飛行許可申請について記載してきましたが、それ以外の規制にも注意が必要です。

例えば、花火大会であれば保安距離が定められていますが、ドローンの飛行にあたって、煙火との衝突を防ぐため(危険なので)、保安距離内のドローン飛行が禁止されているケースは多いです。花火に突っ込んでいく撮影などが規制によりできない地域もあります。

花火大会の動画の中には、花火の中にドローンが入っていくものも多いのですが、そういう撮影が他の規制でできないケースがあります。これはドローンの申請とはまた別の話ですが、撮影者は要注意でしょう。後から違反が発覚することも多いため、十分注意する必要があります。

このあたりは絶対的なものではなく、地域等によるところがあります。

また、イベントに限らず、条例や小型無人機等飛行禁止法など、その他の規制にもご注意ください。

飛行許可申請は行政書士の活用も検討ください

個別申請が必要となる飛行内容は結構面倒です。

なので、個別申請だけ行政書士にお願いするというお客様は多い傾向です。

特にイベント上空の飛行は、件数こそそこまで多くないものの、手間暇を考えると外部にお願いした方が結果的に安上がりなため、行政書士への依頼もご検討ください。

アロー行政書士事務所でも個別申請のサポートを行っています。

ご相談いただければと思います。

ドローン飛行許可申請のサポートに関するサービス詳細は当該ページをご覧ください。料金等の参考も記載しております。

参考文献

無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領

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執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や建設業許可申請、産業廃棄物収集運搬業等の許可申請や契約書作成業務を行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。ドローンはDJI Mini 3を保有し、撮影しています。
ご依頼・ご相談などはお問い合わせよりご連絡ください。
所属:日本行政書士会連合会、東京都行政書士会
行政書士登録番号:24080257