行政書士試験の記述問題が苦手という方は意外と多くいらっしゃいます。
ここでは、行政書士試験における記述問題で確実に部分点を取っていくためのポイントを勉強方法という視点と問題の解き方という視点で解説していきたいと思います。
理由を考えながら択一の問題を解くことで記述得点力UP
行政書士試験の受験勉強の中心は択一式の問題集を解くことですが、この択一の問題を解く際に記述式も意識した形で問題を解くことをおすすめしたいです。
5肢それぞれに対して、なぜこの選択肢が正解なのか(あるいは不正解の肢なのか)理由をつけながら問題を解答してください。
例えば、令和4年度の行政書士試験の記述では「無権代理と相続」の論点から1問出題されました。
この問題の結論自体は誰もが知っている超基礎的な内容でした(本人は追認を拒絶できるというものです)。
択一でも何度も出題されている問題であり、回答の結論がわからないという方はいないかと思います。
ただ、この問題はなぜその結論でいいのかという理由を書かせる問題でした。
試験後、結論は書けたけど理由が書けなかったという受験生が結構多く発生していたように見受けられました。ちなみに理由部分は、本人が追認を拒絶しても「何ら信義に反しないので」となります。
択一では結論だけわかっていれば回答できるものが多いので、サクサクと問題を進めてしまう傾向にあり、答えがすぐにわかったものに関しては解説もしっかり読まないという方がいらっしゃるのですが、そうではなく、しっかりと「理由」を意識して問題を解くことで、記述力がUPするとともに、全体的な知識の定着にも繋がり、合格点が取れる可能性が高まると考えます。
後は、記述問題の大半が過去に択一式で出題されているところから出ているので、基本的には択一式の対策をしっかりやっていれば記述も必然的にできるようになります。
記述式問題集を何でもいいので一冊やり、書くことに慣れる
択一の問題をやっているだけでも記述力はかなり高まりますが、実際に手を動かして書いてみる経験もしておいた方が良いです。
というのも、実際書いてみると意外と書けない漢字が多いからです。
例えば「瑕疵」や「欠缺」、「詐欺」、「管轄」など書けそうで書けない漢字が出てくるかと思います。
私が本試験を受けた際は「妨害」と「撤去」が出てこなくて焦りました。
※落ち着いていれば書けると思うのですが、本試験中は緊張していていつもできることができなくなります。
こうした書く経験をしておかないと本番で言葉が浮かんでも正しく書くことが出来ず減点されてしまうおそれがあるので、練習しておくようにしてください。
後は、40文字程度でまとめるということが意外と難しいので、慣れておくためにも問題集をやった方が良いでしょう。
私は本試験中に書かなければならない内容についてはすぐにわかったのですが、実際書くと50字近くになってしまい、うまく入らないといった事態に陥りました。
私が受けた年の問44~問46は問題自体はそう難しいものではなかったのですが、書きたいことを全部書くと文字数制限内でまとめるのが非常に難しく、何をどう取捨選択するかで悩みました。こうした練習をしておくかどうかでも差が出てくるので、1冊でいいのでやっておきましょう。
なお、どの問題集から的中問題が多く出るかとかは気にしなくていいかと思います。
どの年も問題自体は基本的な内容のものが多いので、とにかくアウトプットに慣れておくという経験をすることが重要だと考えます。
条文を一言一句正しく書けていなくても書くべきことが書けていれば部分点はもらえる
問題にもよりますが、条文や判例と書き方が異なっても点数がもらえる傾向にあると感じています。
例えば令和3年度の問45の模範解答(試験センター発表)を見てみると、「Cが、本件代金債権の譲渡禁止特約につき、知り、又は重大過失により知らなかった場合」と書かれていますが、「重大過失」って書いて大丈夫なの?と個人的に思いました。
条文や判例から見ても重大過失なんて書き方は見たことありませんので、一言一句正しく書くことが求められているのであれば減点対象となる記載だと思います。ただ、解答の意味を考えるならばこれで問題ないと言えます。
こうしたことを踏まえると、試験センターの模範解答が意味するところは、論点を間違えずに必要な要素が記載できれば点数は取れるものと考えます。
また、実際に試験を受けて記述式の実際の点数を確認して思ったことは、言い回しが微妙に模範解答と違っていても意味が同じであればしっかり点数をつけてくれていると感じました。
私は2022年度の問46で、「撤去」という漢字が本番中に出てこなかったため、仕方なく「どかす」とか「明け渡す」といった形で別の言葉で置き換えましたが、採点結果を見てみると、おそらく結構な点数が付いていただろうと思われる結果となっていました。
そのため、一言一句間違えずに書けるようにするというよりは、「意味」と「論点」を間違わないように普段の勉強の時から取組、理解してアウトプットするように意識することが重要であると感じました。
それに丸暗記だと意味の理解をしておらず、危険であるというのもあります。
問題の論点を理解することが重要
キーワードが入っていてそれっぽい文章が書かれていたとしても、「意味が違う」「論点がズレている」という場合はバッサリ0点にされる可能性もあります。
例えば、令和4年度の問45では、「本人が無権代理行為の追認を拒絶しても信義に反しないので、履行を拒むことが認められる。」といった答えになるわけですが、これを「無権代理行為の追認拒絶ができるが、損害賠償請求は免れない。」などの聞かれてもいない内容について答え、本来解答しなければならない拒めるかどうかについて答えていないと大幅に減点される可能性があります。
同年度の問46も見てみると、債権者代位権の転用事例の問題であり、解答の趣旨としては「AはCに対し、Bの所有権に基づく妨害排除請求権を代位して塀の撤去を請求できる」といった形で解答する必要がある問題ですが、これを債権者代位権の転用ではなく、「AはCに対して賃借権に基づき妨害排除請求権を行使して、塀の撤去を請求できる」といったような形で論点を間違えてしまうとバッサリ0点になると考えられます。
また、解答に当たっては「〇〇〇〇という語句を使用すること」と書かれているのにそれを使用しないで別の言葉で代用したりするとバッサリ0点なんてこともあり得ます。
そのため、実際に解答するにあたっては、問題文をじっくり読み、まずは論点整理をしっかり行い、状況整理を行ってください。
そして、実際の解答用紙には何を書くことが求められているのか、落ち着いて整理してください。
問題文を読んだ瞬間に「これ知ってる!」となって問題文の細かい指示や求められていることを見落とす人も結構多いので、本試験では必ずじっくりと問題文を読み整理するようにしましょう。
部分点を確実に取るためには落ち着いて問題文を読むことが重要です。
20点取れればいいという発想で取り組む
ここまでで論点さえ間違えなければ部分点が取れると記載してきましたが、実際の採点基準は公開されておらず、ブラックボックスです。
高得点できるかどうかはその年度の採点基準にもよるため、記述式で高得点して合格するといった計画を立てるのはやめた方が良いでしょう。
ただ、ここまでで記載してきた通り、意味・論点ズレがなければバッサリ切られることは過去の試験結果からほぼないと考えられます。令和3年度の試験では記述式の採点がかなり厳しかったようですが、「論点間違い」「使わなければならない文言を使わない」などのミスさえしなければ普通に採点されていたように感じます。
逆に言うと、論点間違いは一番やってはならないミスと言えます。
そのため、条文の正確な記述ができなかったとしても、意味と論点さえ間違わなければ20点中10点は取れると考えられます。そして、全3問中2問論点間違いしなければ20点は最低取れる計算になります。
このぐらいの点数でも合格できるような計画で勉強に取り組むと効率の観点でもよろしいかと思います。
満点に近い高得点を取ろうと思ったら条文を正確に書けるように練習する必要も出てきます。頻出・重要条文は覚えるべきですが、その他のものも合わせて一言一句しっかり書き取りの練習をするのは時間の無駄です。流れと意味を押さえておく程度の勉強をしておくのが結果的に合格率を高めるものと思います。
予備校や通信講座を使った方が記述の得点は高まるのか?
個人的には記述式だけに関していけば予備校通ったから高得点できるようになるといったものでもないと考えます。
ただ、問題を解く際の注意点(論点の整理の仕方等)は教えてくれるので、ミスによる失点は少なくなるかと思います。
後は、超基本的なことですが、句読点をつけるなどの当たり前のことも教えてもらえます。
行政書士試験では句読点を入れ忘れて減点される方もいらっしゃいます(実際減点されているのかは不明ですが、減点対象であるというのが定説です)。
こうした基本的なことから問題の解き方まで含めて指導があるので、予備校に通うメリットはあるかなとは思います。
後は、毎年行政書士試験を分析しているので、問題を的中させることもあるようです。
ちなみに私はスタディングを使って勉強しました。
記述式の対策も行ってくれ、とてもためにはなりましたので、お金に余裕がある方は予備校利用も検討しても良いでしょう。
スタディングだけで行政書士試験に合格した私がスタディングのおすすめポイントと行政書士試験に合格するためのコツを紹介!のページで紹介しているので興味があればご覧ください。
なお、他の予備校は使っていないのでちょっとわからないのですが、大手で有名なところならかなりしっかりやってくれるものと考えられます。
行政書士試験の記述対策まとめ
記述式試験は択一式の延長線上にあるものですので、択一の勉強をするときから意識して取り組めば相応の得点はできるものと思います。
後はアウトプットになれるために、多少問題集をこなしておくというのがよろしいかと思います。
これから行政書士試験の勉強をされる方はぜひ参考にしていただければと思います。