建設資材運搬でドローンを飛ばす際に必要となる物件の吊り下げ・物件投下・輸送宅配の飛行許可申請について解説

ここ数年、建設資材運搬など物流に近い分野でのドローン活用も多くなっており、物件投下や吊り下げを組み込んだ飛行許可申請を行うケースも多くなっています。

これまでは、農業における農薬散布で物件投下と危険物輸送の項目で包括申請を行うケースが多かったのですが、最近は建設会社(建築系等)で資材運搬での申請が多くなったように感じます。

このページでは、こうした物件投下や吊り下げが必要となる際のドローン飛行許可申請について見ていきたいと思います。

なお、アロー行政書士事務所では飛行許可申請のサポートを行っております。お困りでしたらご相談ください。飛行許可申請代行サービス詳細については該当ページをご覧ください。

ドローンによる物件投下・危険物輸送について知る

ドローンで物件投下や危険物輸送を行うには、許可承認申請が必要です。この2つは包括申請が可能な項目となっています。

物件投下に該当する飛行

物件投下とは、文字通り、何らかの物をドローンで運搬し、投下することを指します。建設資材を運搬し、上空から資材を落とすのであれば、それは物件投下となります。

運搬したものを地表に落下させず、地上にいる人間に受け渡す、あるいは、地表に置く行為は物件投下に該当しません。なので、地表に置くのであれば物件投下の申請は不要な場合もあるでしょう。
※現実的には落下させるケースも想定されるので、受け渡し、置くことが前提でも物件投下を申請することは多いです。

注意点は、農薬や水などの液体を上空から散布するのも物件投下に該当することです。

従って、ドローンによる農薬散布や水を撒く行為は、物件投下の承認申請が必要です。

物件投下の飛行許可承認手続きが必要となるのは、これまでは農薬散布等の農業での利用が多かったかと思いますが、最近は建設工事等における資材運搬での申請も増えています。

物件の吊り下げと物件投下は異なる

物件投下と物件の吊り下げは別の行為です。

物件の吊り下げとは、ドローンにロープ等を取り付け、その先に荷物を結び付けて飛ばす仕組みです。物件の吊り下げは、荷物がドローン本体に直接固定されるのではなく、ロープを使ってぶら下がるため、少し「ぷらぷら」と揺れやすくなり、危険度が高い飛行となります。

近年発売されているDji FlyCart30などの運搬ドローンのウインチシステムでは、この揺れを緩和し、調整する特殊な制御技術が使われており、建設現場での資材の運搬や、山奥への物資配送がしやすくなりました。このほかに、垂れ幕を付けて飛行させる場合も稀にありますが、これも吊り下げに該当します。

この物件の吊り下げは、標準マニュアルでは禁止しています。

従って、物件の吊り下げを行う場合、安全対策を施した独自飛行マニュアルを添付する必要があります。

また、資材運搬における物件投下・吊り下げに関して、改造が必要であるケースが多いため、改造機として登録する必要がある場合もあるでしょう。

機体登録における改造と許可申請における改造の定義が異なるため、ご注意ください。

なお、物件の吊り下げをすること自体に許可承認が必要なわけではありません。許可承認が必要なのは、物件を投下する場合です。

危険物輸送に該当する飛行

危険物とは、火薬類や高圧ガス、引火性液体等が該当します。こうした危険物の輸送は危険度が高いため原則禁止となっており、許可承認手続きが必要です。

この危険物輸送の代表例としては、農薬があげられます。

従って、農薬散布にあたっては、危険物輸送+物件投下の申請が必須です。

なお、ドローン自体に搭載されているバッテリー等は危険物に該当しません。また、付随するカメラ等の業務用機器に搭載されている電池、安全装備(パラシュート)を使用する際に必要なガス等も危険物輸送に該当しません。飛行中に機体と常に一体となっているものに関しては該当しないという考え方です。

飛行許可申請にあたっては追加基準への適合が必要

物件投下・危険物輸送の申請にあたっては、追加基準への適合が必要です。

物件投下の飛行許可申請にあたっての基準

物件投下にあたっては、以下の基準に適合させる必要があります。

  1. 機体について、不用意に物件を投下する機構でないこと。
  2. ドローンを飛行させる者について、以下の基準に適合すること
    • 5回以上の物件投下の実績を有し、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができること。
    • 必要な実績及び能力を有していない場合には、ドローンを飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、物件投下の訓練を実施すること。
  3. 安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること
    1. 物件を投下しようとする場所に、ドローンの飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。ただし、3-3に掲げる基準に適合する場合は、この限りでない。
    2. 物件を投下しようとする場所に、第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。ただし、c)に掲げる基準に適合する場合は、この限りでない。
    3. 補助者を配置せずに物件を投下する場合には、次に掲げる基準に適合すること。
      • 物件投下を行う際の高度は1m以下とする。
      • 物件投下を行う際の高度、無人航空機の速度及び種類並びに投下しようとする物件の重量及び大きさ等に応じて、物件を投下しようとする場所及びその周辺に立入管理区画を設定すること。
      • 当該立入管理区画の性質に応じて、飛行中に第三者が立ち入らないための対策を行うこと。

こうして審査要件を見てみると、なんとなく簡単そうに見えますが、不用意に物件を投下しない機構を説明する資料など、各項目において問題がないことを説明する資料を作るのが結構面倒で手間がかかります。

危険物輸送の許可申請にあたっての基準

危険物輸送に関しては、以下の基準に適合することが求められます。

  • 機体について、危険物の輸送に適した装備が備えられていること。
  • ドローンを飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながらドローンを飛行させることができること。
  • 安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。
    • 真に必要と認められる飛行であること。
    • 飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。
    • 飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
    • 飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

こうした基準に適合させる必要があります。

農薬等を入れるタンクに関する性能(仕様)など、記載する項目は多いため、意外と手間がかかることがあります。

最大離陸重量25kg以上のドローンであることが多いため申請の手間は多い

農薬散布にしても資材運搬にしても、最大離陸重量25kg以上のドローンで許可申請を行うケースが多いかと思います。

申請にあたり、写真の撮影から追加基準への適合性の記載など、手間がかかる項目が多くなっています。

25kg以上のドローンの申請に関してお困りであれば以下のページをご覧ください。

ドローンの飛行目的で輸送宅配を選択した場合の飛行許可申請について

飛行許可申請(包括申請等)をする際の最初の方で、ドローンの飛行目的を選択することとなりますが、このときに輸送宅配を選択すると、具体的に何を運搬するのか記載する必要があります。

また、場合によっては吊り荷の写真、梱包・連結の写真が求められることがあります。

何を運搬するかで変わることがあるため、少々申請に手間がかかります。

特に改造機の場合は申請で手間がかかることが多いため、飛行スケジュールに余裕を持つなど、一定の注意が必要です。

物件投下・吊り下げ・危険物輸送・輸送宅配などのドローン飛行許可申請(包括申請・個別申請)でお困りであればご相談ください

アロー行政書士事務所では、ドローン飛行許可申請の代行・サポートサービスを提供しています。

最大離陸重量25kg以上のドローンでの申請はもちろん、そこに物件投下や吊り下げ、輸送宅配が加わることで、申請の手間がかかります。

お困りであればご相談いただければと思います。

なお、物件投下も危険物輸送も包括申請は可能です。また、資材運搬等も包括申請の範囲内での活用(山間部における工事の資材運搬や苗木の運搬等)も増えている印象です。

参考文献

審査要領
※審査要領を含め、ドローンの規制は改正が多いことから、変更点が生ずる可能性があります。必ず最新の情報を取得の上許可申請を行うようにしてください。

執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や建設業許可申請、産業廃棄物収集運搬業、古物商許可等の許可申請を中心に行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。写真撮影に凝っていた時期がありドローンもその一環でよく飛ばしていました。
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