特定金属くず買受業の届出とは?対象物・対象者は?金属盗対策法で変わる金属くず買取のルール

※本記事は令和8年5月時点で執筆しております。新しい制度のため、執筆時点とは内容が変わっている場合もあることから、適宜最新の情報を取得の上届出・対応をお願いします。相談や書類の作成・提出代行をご希望の場合はお問い合わせください。

令和8年(2026年)6月から始まる特定金属くず買受業の届出について質問を受ける機会が増えてきました。

ただ、届出書のフォーマットや必要書類、添付書類等についてのルールが定まっていないことから、何をすればいいのかわからないという方も多くいらっしゃいます。

また、そもそもどういったルールなのか?なぜこんな規制ができたのかわからないといった質問をいただくケースもございます。

ここでは、特定金属くず買受業の届出について解説するとともに、こうした届出ができた背景や金属盗対策法について簡単に解説していきます。

なお、アロー行政書士事務所では特定金属くず買受業の届出の相談・サポート・代行しております。

ご希望の場合はお問い合わせください。料金等はサービスページにも記載しております。

金属くず買取のルールが大きく変わる?特定金属くず買受業の届出とは?

銅線をはじめとする「特定金属くず」を買取る事業者に対し、届出制(特定金属くず買受業の届出)や厳格な本人確認などを義務付ける規制が2026年6月1日から施行されます。

なぜ今、このような新しいルールが作られたのでしょうか。

その背景には、ここ数年、太陽光発電施設等の銅線ケーブルをはじめとして、マンホール、グレーチング、エアコン室外機といった金属製品の盗難が全国で急増している問題があります。

こうした盗難品の多くが買取業者を経由して現金化されている「法律の隙間」を塞ぐため、令和7年(2025年)6月20日に新たに公布されたのが「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」、いわゆる金属盗対策法です。

これにより、銅などの「特定金属くず」を買い取る事業者には、警察(公安委員会)への事前届出(特定金属くず買受業の届出)が必要となるなど、これまでにない水準のルールが課されることになります。

これまでは自治体ごとの条例等で規制していたものとなりますが、それらに加えて全国で統一されたルールが1つできたということとなります。

特定金属くず買受業に関する届出は2026年6月1日から施行される予定となっており、届出をせずに買取等を行っていると罰則もあるためご注意ください。

なお、施行は2026年6月1日であり、原則として届出の受付開始も同時期となりますが、現在すでに特定金属くずの買受業を営んでいる事業者に対しては経過措置(猶予期間)が設けられています。

具体的には、施行から「3ヶ月を経過する前」までに管轄の警察署へ届出を行えば、そのまま適法に営業を継続することが可能との予定になっています。

盗品の出口となる買受業者側の管理と届出

金属の盗難被害拡大の原因のひとつとして、盗品の出口となる買取業者側の管理の問題があるとされています。

本人確認や帳簿記載を行わないことだけでなく、盗品とわかっていても買い取る不適正な業者の存在が指摘されているようです。

しかし、金属くずの買取りを規制する全国共通の法律はなく、一部の自治体が条例で対応しているに過ぎない状態でした。

条例のない県に盗品を持ち込んで換金されるケースもあり、古物営業法の対象にもならない「法律の隙間」が放置されていたような形となります。

こうした背景から、盗んだ金属をお金に換える抜け穴を全国共通のルールで塞ぐことを目的とし、特定金属くず(盗難リスクの高い金属くず)を買い取る事業者に対して、営業所ごとの届出、本人確認、取引記録の作成・保存などを義務づけたものとなります。

届出先は管轄の都道府県公安委員会(窓口は警察署)で、無届営業には6カ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される予定です。

現時点で特定金属に指定されているのは銅のみのようですが、今後他の金属が追加されるものと想定されます。

届出の受付は令和8年(2026年)6月から開始となります。

古物商許可があるからうちは大丈夫とはならない

古物商許可と金属盗対策法に基づく「特定金属くず買受業の届出」は別の制度となります。

古物商許可はあくまで「本来の用途で使える中古品(=古物)」を扱うための許可です。

一方で、切断された電線やスクラップ化された銅など、本来の用途では使えなくなった金属類は「古物」ではなく「特定金属くず」に該当するものと考えられ、こちらは特定金属くず買受業の届出が別途必須となります。

つまり、自動車解体や中古品買取で古物商許可を持っている事業者であっても、銅などの特定金属くずを扱うのであれば、改めて公安委員会への届出を行わなければならないということになります。

届出には住民票や営業所や保管場所の平面図、法人の登記事項証明書など書類準備が必要であり、意外と手間がかかるのでご注意ください。

自分は対象?特定金属くず買受業の対象物と対象者

では、具体的にどのような物を、どう扱う業者が新法の対象になるのでしょうか?

対象となる「特定金属くず」と対象事業者は?

まず対象となる物品は「特定金属くず」となっています。

法律上は「主として特定金属により構成されている金属くず(製造過程で生じるものや古物を除く)」と定義されており、現時点では「銅」が指定されています。

被覆を剥がされた銅線や切断された銅パイプといった、「主として銅でできた金属スクラップ」がこれに該当すると考えられます。

おそらく、今後は銅以外の金属も指定されて増えていくものと想定されます。

そして対象となるのは、こうした特定金属くずを事業として「買い受ける(買い取る)」業者です。

どのような状態で買い受けるのかで対象になるかが変わる

「どのような状態で買い取るか」によって適用される法律が切り替わるという点です。

古物商許可の項目でも触れましたが、例えば中古の自動車を買い取る場合を考えてみましょう。

車として乗ることができる(=本来の用途で使用可能)状態であれば、それは「古物」であり、古物営業法の範囲となると考えられます。

しかし、自動車から取り出された銅線だけを単体で買い取る場合はどうなるでしょうか。

自動車の部品としてはもう使えない単なるスクラップ(=本来の用途で使用不可)であるため、「特定金属くず」に該当し、金属盗対策法に基づく事前の届出が必要になると考えられます。

「もともとは同じ製品(自動車や家電など)の一部であっても、まだ使える状態で買い取るのか、ただの金属スクラップとして買い取るのか」で守るべきルールは異なってきます。

自社が買い取る物品がどちらに該当するのか考えてみるといいでしょう。

義務付けられるルール

金属盗対策法により特定金属くず買受業者に課せられる義務は、大きく分けて以下の4つとなります。

すでに冒頭で触れた部分もありますが、これらに違反すると何かしらの罰則もあるため、自社のオペレーションにどう組み込むか、全体像を把握しておきましょう。

なお、古物商とルールが似ているため、古物商をお持ちであれば比較的対応はしやすいものと想定されます。

警察(公安委員会)への「事前届出」と「標識の表示」

管轄の警察署を経由して公安委員会へ届出(特定金属くず買受業の届出)を行わなければなりません。

届出には、営業所や保管場所の平面図、法人の登記事項証明書などが必要となります。

さらに見落としがちなのが、届出後には店頭等の公衆に見やすい場所や、自社のウェブサイト上に「氏名」や「届出番号」などを記載した標識を表示する義務が発生するというものです(従業員5人以下でウェブサイトを持たない場合等を除く)。

いずれにせよ、まずはこの届出をする必要があります。

本人確認義務(顔写真付き身分証が原則に)

金額にかかわらず、個人の持ち込みであれば運転免許証などの顔写真付き身分証の提示・確認が必須となります。

法人の場合は、担当者個人の顔写真付き身分証に加えて、法人の登記事項証明書等の両方を確認しなければなりません。

ただし、毎回そんなことはやっていられませんので、実務上の負担を軽減する特例として、2回目以降の取引で、代金をその相手方の口座に振り込む場合は本人確認が免除されます。

現金取引が行われている現場もあるようですが、銀行口座振込への移行などが求められるものと考えられます。

なお、こうした運用に伴うルールは徐々に変化していくケースが多いため、あくまで執筆時点でのものとなります。

取引記録の作成・保存義務

取引の都度、確認した身分証の写しなどの「本人確認記録」と、「取引日時」「買い取った量や価額」「代金の支払方法や口座番号」などを記載した「取引記録」を作成しなければなりません。

これらの記録は、紙の帳簿でなく、パソコンなどの電磁的記録(データ)で作成してもよいこととなっていますが、いずれの場合も3年間保存することが義務付けられています。

盗難品の疑いがある場合の警察官への申告義務

持ち込まれた特定金属くずについて、不自然な切断がされているなど盗難品に由来するものである疑いがあると認めた場合は、直ちに警察に申告(通報)する義務があります。

盗品の換金ルート(出口)を断つという目的を果たすための重要な義務となります。

二重の規制に注意!金属くず商等の自治体条例等が別途定められている場合

全国共通ルール(金属盗対策法やそれに基づく届出)の運用が開始されるからといって、これまで一部の自治体で独自に運用されてきた金属くずに関する条例(金属くず商等)などのローカルルールが消滅するわけではありません。

条例との違い

独自の条例が施行されている都道府県(例えば千葉県の「千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例」など)において、銅などの「特定金属くず」を買い取る場合、条例との「二重の規制(義務)」が同時に課せられる可能性があるということです。

自治体ごとで取扱いが変わってきますので一定の注意が必要です。

両方に該当する場合の「重複義務」の整理

例えば先ほど例としてあげた千葉県では、実務の混乱を防ぐために「双方の規定を履行したことと同一視できる行為(これをやっておけば両方守ったことになるという基準)」のガイドラインを提示する方針を示しています。

必ず管轄の警察署や自治体のホームページで確認し、現場のマニュアルをアップデートしておいてください。

私は東京都の申請が多いので条例等に関係する金属くず商の対応はそこまで多くやっていませんが、地域によっては複数の許可・届出が必要となり、それぞれのルールを守る必要があるのでご注意ください。

特定金属くず買受業の届出をしなかったらどうなる?違反時の罰則やペナルティー

金属盗対策法は単なる協力願いや努力義務ではありません。罰則を伴う規制です。

「うちには関係ないだろう」「バレなければ大丈夫」と届出を怠ったり、ルールに違反したりした場合、事業の存続を揺るがす処分の可能性もあります。

また、インボイス制度の特例措置も使えなくなるといった問題も生じます。

具体的にどのような罰則があるのか、事業者が知っておくべき代表的なペナルティーは以下の通りです。

無届営業(届出義務違反)

事前の届出をせずに特定金属くず(銅など)の買受業を営んだ場合、「無届営業」として6カ月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となるおそれがあります。他社や他人に自社の名義を貸して営業させた場合(名義貸し違反)も同様の罰則の対象となるようです。

警察の立入検査の拒否・報告漏れ

警察から帳簿の報告を求められたり、店舗への立入検査を受けたりすることがありますが、これを正当な理由なく拒否・妨害したり、嘘の報告を行ったりした場合も30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

あくまで一例となりますが、自社のビジネスで買い取る物品が特定金属くずに該当するのであれば、届出を完了させる体制を今のうちから整えておかなければならないと言えます。

特定金属くず買受業の届出で必要な書類は?

では、実際に特定金属くず買受業の届出を行おうとした場合、具体的にどのような書類が必要になるのでしょうか。

事業形態(個人か法人か)に合わせて、以下の書類を準備する必要があります。

なお、古物商許可申請等と同じように、都道府県・警察署ごとにローカルルール的なものが存在する可能性もあるので、届出をする際は必ず管轄の警察署等へ事前に確認することをおすすめします。

【必要書類】

  • 届出書(都道府県ごとで様式が異なる場合があります)
  • 営業所と特定金属くず保管場所の平面図と周囲の簡単な図
  • 住民票の写し(法人の場合は代表者の分が必要)
  • 定款(法人の場合※原本証明の有無は現時点では不明)
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)

上記はあくまで一例となりますが、古物商許可申請に近いものがあるかと思います。

実際に運用が始まってから細かい部分で調整が入ってくる可能性もありますし、状況等により異なるケースもあるかもしれません。提出前に必ず確認をしましょう。

届出で困ったらアロー行政書士事務所の活用も

特定金属くず買受業の届出の提出はそこまで高難度のものではありませんが、警察とのやりとりや書類の作成は少々面倒なため、もしお困りであればアロー行政書士事務所の活用もご検討ください。

また、自分がそもそも対象になるのかわからないといったケースもあろうかと思いますので、相談しながら警察署への提出を行いたいという場合もお手伝いさせていただきます。

サポート料金等に関してはお客様の要望に応じて段階的にわけておりますので特定金属くず買受業の届出のサポート・相談・代行サービスページをご確認いただければと思います。

お問い合わせはこちらからお願いします。

執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や古物商許可申請、酒類販売業免許申請等の許認可申請と契約書作成代行業務を中心に行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。写真撮影に凝っていた時期がありドローンもその一環でよく飛ばしていました。また、著作権相談員(日本行政書士会連合会)として登録されています。
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