工業専用地域はDID(人口集中地区)から除外されたためDIDを理由とした特定飛行の該当による許可は不用に

2026年(令和8年)7月1日から、ドローンの飛行規制に大きな変更がありました。都市計画法上の「工業専用地域」の上空が、航空法のDID(人又は家屋の密集している地域)から除外されたのです。

これにより、これまで人口集中地区(DID)として一律に飛行許可が必要だった臨海部の工業地帯などで、許可なしでドローンを飛ばせるケースが増えます。一定の場合に限りますが、工業専用地域でドローンを活用する事業者にとっては、手続きコストを削減できる規制緩和です。

一方で、「工業地域」や「準工業地域」は対象外であるなど、誤解すると無許可飛行(航空法違反)につながりかねない落とし穴もあります。本記事では、ドローン飛行許可申請を扱う行政書士が、改正の内容と実務上の注意点を解説します。

何が変わったのか|国土交通省告示第435号の概要

具体的には何が変わったのでしょうか?

改正の法的な仕組み

航空法では、「人又は家屋の密集している地域」の上空でドローン(無人航空機)を飛行させる場合、あらかじめ国土交通大臣の許可を受ける必要があります(航空法第132条の85第1項第2号)。

この「人又は家屋の密集している地域」の範囲は、航空法施行規則第236条の72で定められており、国勢調査の結果による人口集中地区(DID)から、「地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通大臣が告示で定める区域」を除いた地域とされています。

ただ、この「告示で定める除外区域」は、これまで一つも指定されていませんでした。つまり事実上「DID=許可が必要な地域」だったわけです。

今回、令和8年3月31日の官報に掲載された国土交通省告示第435号により、初めてこの除外区域が指定されました。指定されたのは、都市計画法第8条第1項第1号に規定する工業専用地域内の区域です。施行日は令和8年7月1日

実務上の効果

工業専用地域の上空を飛行する場合、その場所が地図上DIDに含まれていても、「人又は家屋の密集している地域」の飛行許可(いわゆるDID許可)は不要になりました。

さらに重要なのは、DID飛行のほかに夜間飛行や目視外飛行などの承認対象となる飛行方法にも該当しない場合、その飛行はそもそも「特定飛行」に該当しないという点です。特定飛行に該当しなければ、次のような義務も課されません。

  • DIPS2.0での飛行許可・承認申請
  • 飛行計画の通報義務(特定飛行でない場合でも推奨)

許可申請の手間を含めて多少なりとも負担は軽減されるため、工業地帯で反復的にドローンを飛ばす事業者への影響は小さくありません。

なぜ工業専用地域だけが除外されたのか

工業専用地域は、都市計画法で定められた13種類の用途地域のうち、唯一、住宅を建てることができない地域です。住宅だけでなく、店舗や学校、病院、ホテルなども原則として建築できず、専ら工場のために確保された土地です。

DID規制の趣旨は、機体の落下時に地上の人や家屋へ危害が及ぶリスク(グランドリスク)を抑えることにあります。居住用家屋が存在せず、不特定多数の人が集まる施設もない工業専用地域は、このリスクが相対的に低いと判断されたわけです。

背景には、自治体や事業者からの規制緩和要望がありました。国家戦略特区の検討過程では、千葉市から「工業専用地域におけるドローンの飛行に係る人口集中地区の規制緩和」が提案されており、臨海部のプラント点検や物流ドローンの社会実装ニーズが後押しになった形です。

【要注意】「工業地域」「準工業地域」は対象外

今回の除外対象は、あくまで「工業専用地域」のみです。名前が似ている次の用途地域は対象外で、DIDに該当すれば従来どおり飛行許可が必要です。

  • 工業地域:住宅や店舗の建築が可能。工場の合間に住宅が混在しているエリアも多い
  • 準工業地域:住宅・商業施設・軽工業が混在する地域

「工場が並んでいるから工業専用地域だろう」という見た目の判断は危険です。町工場が集まるエリアの多くは準工業地域や工業地域であり、工業専用地域は臨海部のコンビナートや大規模工場団地などに限られます。無許可でDID内を飛行させた場合、罰則の対象となるため、飛行前の確認は必須です。

飛行場所が工業専用地域かどうかを確認する方法

用途地域の指定状況は、次の方法で確認できます。

  1. 全国都市計画GISビューア:国土交通省が提供するウェブ地図です。「用途地域」タブから「工業専用地域」を選択すると、該当区域が地図上に表示されます。
  2. 自治体の都市計画情報:市区町村の都市計画課の窓口や、各自治体が公開している都市計画図・用途地域マップで確認できます。境界付近で飛ばす場合は、自治体への直接確認が確実です。
  3. 不動産情報サイト等の用途地域マップ:参考にはなりますが、最終確認は公的な情報で行いましょう。

注意したいのは、地理院地図などのDID表示には、工業専用地域の除外が反映されているとは限らない点です。DIDの地図は国勢調査に基づく統計上の区域をそのまま表示しているため、「地図上はDID(赤色)だが、用途地域を重ねると工業専用地域なので許可不要」というケースが今後は生じます。DIDの地図と用途地域の地図、両方を重ねて確認する習慣をつけてください。

許可不要になっても残る規制

DIDの許可が不要になるだけで、航空法上のその他の規制や関係法令はそのまま適用されます。実務で特に確認すべきポイントを挙げます。

① 空港等周辺・150m以上・緊急用務空域

工業専用地域は臨海部に多く、空港周辺の空域と重なりやすいのが実情です。京浜・京葉エリアの工業地帯は羽田空港の進入表面等に近接する場所も多く、該当すれば空港等周辺の飛行許可が別途必要です。また、地表・水面から150m以上の空域、緊急用務空域の規制も従来どおりです。

② 夜間・目視外・人モノ30m未満などの「飛行の方法」

DIDから除外されても、承認が必要な飛行方法の規制は変わりません。実務上の盲点になりやすいのが「人又は物件から30m未満の飛行」です。

工場のプラント、タンク、煙突などの設備を点検する場合、対象設備に30m未満まで接近することがほとんどです。設備の所有者・管理者が飛行の依頼者(関係者)であれば「第三者の物件」に当たらず承認不要ですが、隣接する他社の設備や第三者の車両等に30m未満まで近づく可能性がある場合は、30m未満飛行の承認が必要です。夜間の設備点検であれば夜間飛行の承認も要ります。

「DID許可が不要になった=申請が一切不要」ではなく、飛行の方法によっては引き続きDIPSでの承認申請が必要になる点に注意してください。

③ 小型無人機等飛行禁止法・条例など航空法以外の規制

航空法とは別に、小型無人機等飛行禁止法による飛行禁止区域(防衛関係施設や原子力事業所の周辺など)があります。臨海部の工業地帯には対象施設が所在することもあり、こちらは今回の緩和と無関係に飛行が原則禁止です。

なお、同法は2026年7月14日施行の改正で規制対象が拡大されており、あわせて確認が必要です。

このほか、自治体の条例による飛行制限、港湾管理者や土地所有者・施設管理者の承諾、石油コンビナート区域での安全配慮なども、飛行計画の段階で必ず確認しましょう。

④ 機体登録・リモートID・保険

100g以上の機体の登録義務とリモートID搭載義務は、飛行場所を問わず適用されます。また、2025年10月1日以降、最大離陸重量25kg以上の機体の飛行には第三者賠償責任保険の加入が必要です。

実務での活用シーンはある?一般の方にはほとんど関係ないのが実情

今回の緩和に関しては工業専用地域のみが対象となるため、こうした工場の事業者のみが関係するものであり、一般的なドローンユーザーにはほとんど関係ないものであると考えられます。

また、こうした工業専用地域で飛行させるにあたり、先ほど記載した人モノ30m未満の承認や目視外飛行の承認は必須となるケースが多いため、実質的には許可承認が必要な場合がほとんどかと思います。

ただ、飛行用途によっては大幅に手続きを簡略できることとなります。

夜間飛行が関連する場合の個別申請はしやすくなる

また、DID上空における夜間の目視外飛行等は個別申請が必要となりますが、DID×夜間×目視外は日時指定が必要となります。更に独自マニュアルも必要となります。ここにDIDという条件がなくなると、個別申請は必要であるものの、申請自体は楽になりますので、夜間に飛ばす必要があるケースにおいては申請が楽になると言えるでしょう。

まとめ

  • 2026年7月1日施行の国土交通省告示第435号により、工業専用地域の上空はDID(人又は家屋の密集している地域)の飛行許可が不要になった
  • 対象は都市計画法第8条第1項第1号の工業専用地域のみ。工業地域・準工業地域は対象外
  • 夜間・目視外・人モノ30m未満などの飛行方法の規制、空港等周辺の空域、小型無人機等飛行禁止法、条例、土地管理者の承諾などは従来どおり適用される

規制緩和は活用してこそ意味がありますが、「許可不要」の範囲を読み違えると航空法違反のリスクが生じます。

執筆者情報

行政書士 樋口智大

アロー行政書士事務所の代表行政書士。
ドローン飛行許可承認申請や古物商許可申請、酒類販売業免許申請等の許認可申請と契約書作成代行業務を中心に行っています。また、自身で会社を設立し起業した経験を活かしたビジネス支援も行っています。行政書士資格の他、宅建士やドローン検定1級などに合格しています。写真撮影に凝っていた時期がありドローンもその一環でよく飛ばしていました。また、著作権相談員(日本行政書士会連合会)として登録されています。
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